絵本むすび

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絵本『あいうえおの本』日本一美しい、ひらがな絵本の金字塔

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日本で一番美しい「あいうえおの本」はこれでしょう!

ひらがなを扱う絵本は数々あれど、この絵本は別格。

ひらがなの楽しさ、面白さ、美しさ、どこまでも広がる言葉の可能性……大人の鑑賞にも耐えうる良質な「あいうえおの本」をお子さんのひらがなデビューにぜひどうぞ。

 

 

絵本の紹介

この絵本には文章やセリフ、ストーリーは一切存在しません。

左側のページには「ひらがな」が一文字、右側のページにはそのひらがなから始まる言葉の絵、という非常にシンプルな構造です。

しかし、一旦ページをめくれば、安野光雅さんならではの奥深い世界にはただただため息がでるばかり……。

 

安野光雅さんは、淡い色彩と緻密なタッチの画風にて多くのファンを惹きつけ、数々の絵本・挿絵・装丁を手掛けていて、世界各地の風景を描いた「旅の絵本」シリーズなども有名です。

 

 

特徴的なのは、静謐さを感じるタッチでありながら、だまし絵などのギミックや絵によるダジャレなどの工夫と遊び心が詰まっている事でしょうか。

読めば読むほど、絵の奇妙さ不思議さの虜になる、その安野光雅さんが描く「あいうえおの本」がただのひらがな絵本で終わる訳もなく……大人も子供もひらがなの魅力の虜になる不思議な絵本ですよ。

 

 

まず、左側のページにあいうえお順で並べられたひらがなは、全て木材で表現されています。

これ、適当に描いているんじゃないんですよ、一切の金具を使わない伝統工法の木組みのみで実際に作られたひらがな、の絵なんです。

写真顔負けの精密な絵で描写された職人技の美しさ……ひらがなという日本独自の文字を日本の伝統技術で表現するとは、秀逸なアイデアですね。

それぞれの木目までも描き出し、その写実性の高さは、私が子供の頃にこれは写真なのか絵なのかと悩んだ事があるくらいです。

ちょっとした所にカンナの削り跡があったり、木ねじがちょこんとついているのも、ダジャレを兼ねたアクセント。

巻末には、この木組みのひらがなを作る為の道具がずらっと並び、ひらがなをどうやって木組みに落とし込んでいったかの図も載せているのも、実に面白い試みです。

 

 

右側のページには、それぞれのひらがなに関連する生き物や食べ物、乗り物、オモチャなど様々なモノが描かれています。

文字と挿絵を枠のように囲む線画にも、いくつもの絵が組み込まれていて、全て独自のデザインになっているんですよ。

例えば、「あ」ならば、隣ページには「あり」と「あんぱん」、周りを囲む枠の線画には「あさがお」「あひる」「あしか」「あざみ」など8種類の生き物や植物などが描かれています。

 

この文字のページには一体何が隠れているのだろう、と探してみるのも楽しみのひとつ。

上手く見つけられなくてもご安心くださいね、ちゃんと答え合わせのページもありますよ。

更に、絵を単に羅列するに留まらず、ダジャレやトンチ、騙し絵などの細かい工夫がそこかしこに散りばめられており、安野光雅さんならではの中世ヨーロッパ風な小人の姿もちらほら見受けられ、次のページには何が描かれているのだろう、とワクワクが止まりません。

 

 

安野光雅さんの遊び心はこれだけじゃありませんよ!

表紙は両面、漢方の薬箪笥をモチーフにし、裏表紙の箪笥の上には濁点と半濁点の入った瓶が置かれています。

ページをめくれば、ひらがな一文字を振られた薬包の入った小引き出し、薬の材料を粉末にするための道具の薬研まで描かれている、念の入りっぷり。

 

子供の頃の私は、「これ何だろう??」とずーっと疑問でした。

大人になってから漢方だと気付いた時は「なるほど!」と得心がいくのと同時に、「そんなの子供にわかるかーい!!」と叫びたくなりましたね。

昔ながらの漢方の道具を知っている小さな子供なんて超少数派ですよ、皆様の周りにいますか?

「あー、これは薬研だねー」だなんて訳知り顔する幼児がその辺にぽんぽんいたら、むしろ日本の状況どーなってるの??と聞きたいくらいです。

 

紙面でお顔を拝見した事も、実際にお会いした事もないのに、安野光雅さんの悪戯っぽい笑い声、「わかるかな??」と問いかける声が絵本から聞こえてくるみたい~。

私は、数十年越しで、安野光雅さんの仕掛けた悪戯に翻弄されたという訳で……いや、もうこの絵本には本当にヤられました!!

 

 

我が家の読み聞かせ

我が家の7歳長男と「あいうえおの本」との日々を時系列にまとめてみました。

 

 <1~2歳>

1歳誕生日頃から、読み聞かせをスタート。

文字を早く読めるようにという下心もありましたが、それよりもまず、言葉を表現する文字という存在を認識して慣れ親しんでくれたらいいなあ、という程度の気持ちの方が強かったですね。

特別な事は何もしてません。

まずは、ひらがなを一文字ずつ指差しながら読み上げて、 隣の絵も指差しながら名前を呼ぶだけ。

長男は3歳寸前まで本当に一言も話さなかったので(「ぶーぶー」や「わんわん」すらも話さない、音としての声をだすのみ)、まずは言葉のシャワーを浴びせるつもりで、読み聞かせを何回も繰り返してました。

 

<3歳>

3歳の誕生日前にいきなりペラペラ話し始め、同時に絵本へのアクションが増えました。

「これはなーんだ?」とクイズにしてみたり、読み上げながら木組みの文字をなぞるのを喜ぶように。

絵については、私からはアクションは起こさず、本人の好奇心にお任せ状態で、聞かれたら答えるスタンスをとっていたのですが、子供あるあるな「これ何?」祭りが始まった頃は、質問攻めが凄まじかったです。

3歳後半頃にはだんだんひらがなが読めるようになり、一緒に読み上げたり、「じぶんでよむ!」と言い出したりするようになりました。

私がひらがなを読めば、息子がいかに早く絵の名前を答えるかを競ってもいましたね。

 

 <4~5歳>

文字を書く時に、度忘れした文字を調べる為のお手本として、活用し始めました。

私が勧めた訳ではないですよ、自分で勝手に調べ始めたんです。

「ぬ、ってどうやって書くんだっけ?あ、そうだ、あいうえおの本で調べよう!」というのは、実際に長男が口にしていたセリフ。

また、2歳下の弟に対して、メインの絵の説明を詳細にするようになり、知識が随分身についた姿には驚かされました。

 

<6歳>

様々な語彙や知識が爆発的に増えてきたせいか、今度は絵の中の様々な仕掛けに段々気づいてきました。

騙し絵やダジャレなどのちょっと考えないとわからない部分や、 言葉の響きのちょっとした違いを楽しむ為に並べられた絵に気付いては、誇らしげな顔。

特に、絵から言葉のダジャレを推理するというのは、高度な思考能力が身についていなければできませんので、 心の成長ぶりにびっくり。

同時に、この絵本が年齢的も長く、試行的に深く楽しめる優れた1冊である事に感心させられましたね。

 

<7歳>

枠の線画の中に描かれたモノの名前と簡単な説明がほぼ可能に。

ひらがなを完全にマスターし、子供目線で楽しめる仕掛けも一通り目を通したせいか、最近では手に取る回数が激減。

本人の嗜好としては、知識を吸収したり、物語を楽しめる本へと順調にステップアップしていますので、ひらがな絵本と疎遠になるのは自然な流れなんでしょうね。

次にこの絵本を手に取る機会が増えるとしたら、それはより知識と教養を備えた大人目線での「鑑賞」を覚えた時かもしれません。

 

余談

次男も3歳前後でひらがなを読めるようになりましたが、この絵本を私がゴリ押しして読み聞かせていたのが、かなり影響したかも?

まあ、字が早く読めたところで、将来的に大した影響なんてありませんけどね……。

義務教育のおかげで識字率が高い日本では、大抵の子がいずれは字を読み書きできるようになる訳ですから。

でも、文字の面白さを幼児の頃から満喫できるというのは、本人にとって得難い経験にはなりますので、読ませていて良かったとは感じています。

 今は、この絵本を5歳次男が中心となって愛読中!

 

 

なお、私はこの絵本の初版を幼児の頃に従姉のお下がりでもらってから、アラフォーになった今も大事に持っています。

今や私にとっては、自分自身だけでなく、家族の思い出の詰まった大切な絵本、特別な1冊になりました。

ページをめくれば、幼い頃の私がひらがなを鉛筆でなぞった跡が途中まで残り、その続きを数十年越しに5歳当時の長男が書き込んだ跡、次男が描いた落書き。

けれど、元々の絵の美しさは色褪せぬまま……この絵本の中は時が止まったようです。

変わっているのは読み手だけなんですよねー。

次に読み手側が変わるとしたら、どんな時かな……?

また、私自身でも、子供の頃と現在では読んで感じるものが違うように、これから何十年後かに読み返した時にもそれまでと違う感じ方ができるのかな、と思うと、今から楽しみです。


 

まとめ

ただのひらがな絵本と侮るなかれ!

子供が小さな内から、優れた芸術、美しい日本語、高い知性によるユーモアへ触れられる絶好の機会を与えてくれる1冊ですよ。

装丁も素晴らしいですから、出産祝いやプレゼントにもぜひオススメです。

 

 

【作品情報】

  • 題 名  あいうえおの本
  • 作 者  安野光雅
  • 出版社  福音館書店
  • 出版年  1976年
  • 税込価格 1,650円
  • ページ数 104ページ
  • 我が家で主に読んでいた年齢 1~6歳(ストーリーがないので、ぜひ赤ちゃんの頃から読んでもらいたいです)