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絵本『だいじょうぶ だいじょうぶ』絵からは思いもつかぬ深ーい話

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ぼくとおじいちゃん、シンプルでほんわかした絵とユーモラスなやり取りに心はほっこり、ラストはしんみり……読めば読むほど、心に沁みる絵本。

でも、考えようによっては、更に深い、そして、重い絵本の気がします。

「だいじょうぶ だいじょうぶ」、皆様はこのセリフに何を見出しますか?

 

 

 

簡単なあらすじ

ぼくが大好きなおじいちゃん、小さい頃からいつも一緒にいるおじいちゃん。

ぼくが困った時、おじいちゃんが掛けてくれるおまじないの言葉は「だいじょうぶ だいじょうぶ」。

初めての事、できない事、不安な事、何があっても、だいじょうぶ だいじょうぶだよ……。

 

 

絵本の紹介

心に寄り添うおまじないの言葉

どんな自分でも丸ごと受け止めて、そっと背中を押してくれる、こんなおじいちゃんが本当にいたら、素敵ですねー。

初めてが不安なのは当たり前、できない事があっても当たり前、いろんなものが怖くても当たり前。

どんな事があっても、だいじょうぶだいじょうぶ。

ぼくを見守る視線は愛情に満ちていて優しくてブレません。

絵本を読んでると、こちらの心までほぐれていきそうな、おじいちゃんのおおらかさがとっても素敵!

 

おじいちゃんの言葉通り、ぼくは成長と共に、初めてを沢山乗り越えて経験を積み、できなかった事ができるようになって、いろんなものをワクワク楽しむようになります。

おじいちゃんがぼくの手を引っ張っていくのではなく、ぼくが自分自身の足で歩むのを見守っているよ、と励ましてくれる、おまじないの言葉がどれほど力になってくれた事か……。

 

私の個人的な考えですが、躾をするのが親の役割ならば、祖父母の役割は孫を受け入れる場所のひとつになる事。

ただ甘やかすのとは違う、「ここにいてもいいんだよ」「君が大切だよ」と迷いなく言い切って、自分を無条件に受け入れてくれる人がいるというのは、子供の心の成長にとって重要な拠り所になり、一生を支える自己肯定感の源泉になります。

幼いぼくにとって、おじいちゃんは大切な心の拠り所になったんでしょうね。

 

最後のページに差し掛かって描かれるのは、今度は大きくなったぼくからおじいちゃんへ贈るおまじない。

時が経てば、赤ん坊がどんどん成長する一方で、大人は同じだけ年を重ね、いつかは老いていく。

老いは、生きている以上、絶対に避けられません。

それに、生きていれば、病気だってするし、怪我だってする事もあるでしょう。

でも、だいじょうぶ だいじょうぶ。

最後のページで、かつて自分が掛けてもらったおまじないを囁きかけ、おじいちゃんに寄り添うぼくの姿に、こうやって人の心と命は繋がっていくのだと、切なくも温かい気持ちになります。

いや~、大人も読んでいてウルッとしそうな良い絵本です。

 

 

だいじょうぶ、という言葉に伴う責任

ここでホッコリしながら文を結びにしても良いのですが……このおじいちゃんの「だいじょうぶ だいじょうぶ」、大人側の目線から考えると、気のせいか、言葉の重みがずっしり来るんですよね。

 

例えば、自分にとって大切な誰かの不安や戸惑いを受け止める時、皆様は安易な励ましを無責任にできますか?

少なくとも、私は口にする言葉をよく考えます。

なぜなら、相手は他人じゃなくて、自分にとって大切な人で、力になりたいから。

多分、大抵の方々も同じような気持ちではないかと思うのですけれど……。

 

聖人君子でもない限り、通りすがりの人に掛ける「大丈夫」と、大切な人に掛ける「大丈夫」、同じ言葉でも、込められた気持ちや思いは相当違いますよね?

自分の発言全てに重い責任を担うとは言いませんが、それでも大切な人へ言葉を掛ける時は、自分なりにその人の存在を背負っている部分がある、と思うんです。

大切な人の力になろうとすれば、その人の抱えているものを多少なりとも自分も一緒に抱える事になりますから、自然と言葉を選びますし、発した言葉には責任も行動も伴います。

 

この絵本のおじいちゃんも、ぼくに対して、適当に「だいじょうぶ だいじょうぶ」と声をかけてお茶を濁していた訳ではなく、ぼくという存在を受け入れ、支えていく覚悟を持っての言葉「だいじょうぶ だいじょうぶ」だったのではないかな……。

 

自分の出産時を思い出す……

そう考えながら読み聞かせをしていると、私は初めて出産した時を思い出すんですよ。

生まれてきた息子を初めて抱っこした時、私が感じたのは喜びではなく、腕の中にいる小さくて温かい命に対して自分が負っている責任の重み。

抱っこしている赤ん坊の体重自体は軽いのに、その命、その人生の重みが途轍もなくずっしりと感じられ、思わず「自分がこの子を守っていけるだろうか」と、不安と恐怖に胸が圧迫されるような苦しささえ覚えました。

 

今でこそ育児をごく普通にこなしていて、日々息子に対して励ましやら注意やら諸々を口にしていますが、それも全ては、あの時に感じた重み、息子に対する親としての責任を背負っていく覚悟があってこそ。

ただの他人にここまでする事なんてありません、息子が私にとって背負うべき存在だから、なんですよね。

 「だいじょうぶ だいじょうぶ」を読み上げる度に、普段自分が発している言葉に込められた覚悟と責任を改めて問われている気持ちになり、いつも自分にとっての原点である、あの日の腕の中の重みを思い出します。

考え過ぎがな……でも、私はこの絵本にいつも問いかけられている気がするんですよねー。

 

 

我が家の読み聞かせ

我が家のちびっ子兄弟、父方の祖父母も母方の祖父母も大好きでして、「おじーちゃん達はぼくたちの事が大好きだよね!」と心の底から確信してます。

そのせいか、おじいちゃんとぼくの話が受け入れやすかったらしく、絵本の内容もスーッと心に入っていった模様。

「ぼくたちとおじーちゃんみたいな話だね!」と喜んで、よちよち歩きの頃にどうやって祖父母と過ごしていたかを聞くのが大好きですよ。

最後のおまじないをかける立場が逆転している点については、子供なりにではありますが、5~6歳時点にてなんとなく感じ取っている……かな?

深く理解するのはきっとまだ先でしょうが、今は感じているだけでも上々ですね。

 

 

この絵本、祖父母の立場の方が読んでも、かなり心に刺さるんじゃないでしょうか。

祖父と孫、という関係性の絵本はそんなに多くないですし、ラストがラストなので、かなりしんみりしそうです。

というよりも、親しい人を見送った経験のある大人なら、皆当てはまるかも。

私も読み聞かせながら、亡き祖父母を思い出します。

父方も母方も遠方に住んでいましたから、この絵本のように、日々一緒に過ごす事はありませんでしたけれど、小さな頃の私にとって、会えば何の気兼ねもなく甘えられる相手でした。

そういう相手がいた、という思い出があるのは恵まれてますよね。

 

そして、最近では、昔より随分小さくなった両親の背中が心に浮かびます。

以前は両親が私を力づけたり気遣ってくれる側だったのに、最近は逆になりました。

人は必ず老いるもの、いずれ訪れる別れも避けられぬもの……。

この絵本を読むと、おじいちゃんとぼくのようにいつかは必ず立場が入れ替わると突き付けられますね。

息子達の前では、ほのぼのとした絵本として読んでいますが、心の中では釘を刺されているような気持になりますよ。


 

まとめ

一見のほほんとした絵面なのに、思いもかけない深みが隠れている絵本でしょう?

子供が読むのはもちろん、大人が読んでも、それぞれの状況に当てはまるものがありそうですよね。

 

きっといつか、自分を支えてくれた大切な人を今度は自分が支える番が巡ってきた時、この絵本は子供だけでなく、大人にも力になってくれますよ。

とても、素敵な、絵本です。

 

 

作品情報

  • 題 名  だいじょうぶだいじょうぶ
  • 作 者  いとうひろし
  • 出版社  講談社
  • 出版年  1995年
  • 税込価格 1,100円
  • ページ数 31ページ
  • 我が家で主に読んでいた年齢 4~6歳(3歳くらいから読むのもオススメ)