十数年前、赤ちゃん向け絵本界に颯爽と現れた新星、『だるまさんが』。
かがくいひろしさんが教育現場で培った経験を活かして描いてあり、読んで楽しい、身体を動かして楽しい絵本に仕上がってます。
親子で読み聞かせすれば、我が子の可愛さをこれでもかと満喫できる事、間違いなし!
新人による大きなヒットが難しい絵本界にて、初版からわずか十数年で、発行部数がトリプルミリオンを叩き出したのは伊達じゃありません。
本当に、す・ご・い・え・ほ・ん・だ!
簡単なあらすじ
日本人なら子供の頃に1度は遊んだであろう「だるまさんがころんだ」を絵本で楽しんでみませんか?
ルールは簡単、だるまさんと一緒にポーズを取るだけ。
さあ、ご一緒に、だ・る・ま・さ・ん・が……!?
絵本の紹介
だるまさんの人気の秘密は?
誰もが知っている伝統的な遊びを元にした、わかりやすくてシンプルな構成。
「だ・る・ま・さ・ん・が」で左右に揺れる(四股を踏んでいる?)だるまさん、そして、お決まりの「ころんだっ!」ではなく、クスッと笑える決めポーズ!
絵本に出てくる動きは全て、座ったままでも立ったままでもOK、寝ながらでもOK。
ハイハイしている赤ちゃんでも、よちよち歩きの幼児でも、簡単に真似できます。
1~3歳頃って、自分で歩けるのが楽しい、走れるのが楽しい、ジャンプできるのが楽しい……自分の身体を自分の意志で自由に動かせるようになってきて、ただ動くだけでも嬉しい楽しい面白いっ、という特別なお年頃ですよね。
そんなお年頃の子供達、身体を一緒に動かして楽しめる絵本があれば、前のめりで食いつきます。
絵本のだるまさんと自分が同じ動きをできるのが面白い、という小さな子供の気持ちへぴったり寄り添う眼差し。
「どんな身体の動きなら楽しいのか、誰でも楽しめる身体の動かし方とは何か」を考え抜いて練り上げてある、だるまさんのアクション。
色使いは、乳幼児の注意を最も引く赤がメインカラー。
丸みを帯びただるまさんのシルエットは赤ちゃんの肌のようにほにゃりと柔らかな質感を感じさせる線で描かれていて、絵の中で伸びたり縮んだりする変幻自在さが興味を惹きます。
ページをめくる度に、表情とポーズを変えるだるまさんの愛くるしさとユーモア。
子供が大好きな鉄板ネタ「おなら」も盛り込み、最後はみんな釣られてニッコリしてしまうだるまさんの笑顔が待ってます。
いやー、これはよくできた絵本ですね、乳幼児が喜ぶツボを押さえまくりですもの。
そりゃ売れるわ!!
売上300万部以上という数字がどれだけすごいのか?
以前、とある絵本雑誌を小児科でぱらぱら見ていたら、ミリオンセラーの絵本ランキング記事が掲載されていましてね、名だたる名作絵本が並ぶ中に「だるまさんが」が上位に食い込んでいたんですよ(トップ10だったか、そのすぐ下くらいだったかな?)。
この少子化の時代、新顔の絵本がそこまで売れるとは、と非常に驚きました。
いや、絵本業界って、子供とその親を相手とする性質上、毎年購買層が入れ替わるじゃないですか。
子供が生まれる以上、常に新規の顧客を獲得できるというメリットはあるものの、子育てが終わってしまえば、ほとんどの人は絵本に関わる事がなく、情報を誰かと共有する事もなくなってしまう……。
顧客としての持続性や連続性に欠けるのがデメリットではないでしょうか。
そうなると、昔からのコツコツ売り上げと知名度を積み上げてきた、いわゆる名作絵本が人気的にはどうしても強く、そこへ新しい絵本が人気上位へ食い込んでいくというのはとても難しい、と考えられる訳です。
それを考慮すると、この『だるまさんが』は、初版からたった10年ちょっとで300万部以上売り上げて、赤ちゃん向け絵本の代表的作品にのし上がったのは驚異的!
いくら、インターネットの情報化が進んで、今までとは状況が違ってきているとはいえ、これは生半可な作品にはできない事ですよ。
そもそも、単巻ベースで300万部以上売れている絵本は、約10冊程度。
そのほとんどの初版が1960年代、1970年代という中で、いきなり2008年初版で突き抜けているのが『だるまさんが』です。
テレビやSNSで取り上げられてヒットする事例は絵本にもありますが、そういったブースター効果を以てしても、この数字には度肝を抜かれる……!
だるまさんがどれほど子供の心を鷲掴みしたか、絵本を実際に買う親の思惑にぴったりハマったか、数字にハッキリ表れてますね。
絵本作家としてのかがくいひろしさん
作者のかがくいひろしさんは、元々養護学校教諭として長年勤めていらした方で、絵本作家のデビューは50歳とかなり遅咲き。
教諭として生徒と真摯に向き合い、身体の動きや表現を通して、様々な発達や学びの現場を見てきた経験が存分に生かされた絵本作りが特徴的です。
そして、初めて出した絵本がこの「だるまさんが」というスーパールーキー。
これだけの人気作になるとは、ご本人も出版社側も驚いたでしょうね~~。
残念極まりないのは、既に病により故人となっていらっしゃる事……絵本作家としての活動期間はたったの4年だったんですよ。
新進気鋭の絵本作家として、本来ならば子供に寄り添った素晴らしい絵本をもっと沢山世へ送り出すはずだったのにと思うと、非常に惜しまれてなりません。
でも、かがくいさんがどんな風に子供達と向き合ってきたかは、遺してくれた絵本を読めばわかります。
誰もを笑顔にしてしまうだるまさんのように、きっと素敵な先生だったんでしょうね。
だるまさんは3冊シリーズになっていて、セットで出産祝いやプレゼントにするのもオススメ。
他の2冊『だるまさんと』『だるまさんの』も、読んで遊んで楽しい、優れた絵本ですよ。
『だるまさんと』は人と触れ合う楽しさと喜び、『だるまさんの』は自分の身体の一部をクローズアップする面白さが特徴。
シンプルイズベスト、凝った作りはなくとも身体感覚をクローズアップした面白さは、かがくいひろしさんの真骨頂ですね。
どれを選んでも損はありません、お好みで1冊手に取ってみてくださいね。
我が家の読み聞かせ
この絵本との出会いは、長男が1~3歳まで通っていた保育園。
仕事が終わって教室へお迎えに行くと、低年齢クラスでは保育士さんが丁度読み聞かせをしている時間で、「だるまさんが」を読んでいる事が多かったんです。
保育士さんと一緒になって声を張り上げながら読み上げ、だるまさんになりきって、ぶんぶん揺れるクラスの子供達の姿が可愛くて、見ているだけで最高に癒されました。
保育士さんが別の絵本を読もうとしても、「だるまさんをよんでー!」とリクエスト。
ページをめくる度にこぼれる満面の笑顔、全身を使って楽しんでいる子供達の姿を見て、こんなに愛されている絵本ならば、ぜひ手元に置いておきたいと購入しました。
これは買って大正解、読んでいて心から楽しい素敵な絵本です。
息子達と何回読んで、何回一緒にだるまさんがころんだを楽しんだことか!
読む時は、私も息子達もポーズを取りながら一緒に読むのがお約束。
一緒になってセリフを読み上げながら、ぐらぐら揺れたり、ぺちゃんこになったり、飛び上がったり……最後に「にこっ」とする場面では、息子二人のほっぺをチョンチョンつついて、笑顔にするのもお約束です。
読み聞かせって、膝の上でおとなしく読むだけ聞くだけではないんですよね、
本来の対象年齢は1~3歳くらいですが、長男は7歳過ぎてもまだ私の元に持ってきて、読み聞かせでは一緒に笑いながらアクションをとります。
我が家にある絵本の中でも、最も息が長いんじゃないかな?
なにしろ、1歳から読み始めて、7歳でもまだ読んでいるんですからね。
数ある赤ちゃん絵本の中でも、7歳になってまで読んでいるのはこれだけですよ。
長男が甘えん坊なだけかもしれませんけど……。
だるまさんが多くの方々に愛されているのも、息子達の楽しみっぷりを見ていると、納得です。
まとめ
今や赤ちゃん絵本の大定番となりつつある「だるまさんが」。
絵本は、流行によって一時的な人気を獲得しても、時間の経過と共に淘汰されて、どの時代の子供にも愛される普遍性を持った作品だけが残っていく厳しい業界。
けれど、「だるまさんが」は出版されてから10年以上経つ今も、人気に衰えは見えません。
次の10年、その次の10年……だるまさんには変わらず子供達に愛されながら、一緒に「どてっ」とずっこけていてほしいですね~。
作品情報
- 題 名 だるまさんが
- 作 者 かがくいひろし
- 出版社 ブロンズ新社
- 出版年 2008年
- 税込価格 935円
- ページ数 24ページ
- 我が家で主に読んでいた年齢 1~3歳(0歳からでもオススメ)