絵本作家エリック・カールさんの代表作といえば、『はらぺこあおむし』が有名ですが、この絵本『できるかな?あたまからつまさきまで』もオススメ!
読む楽しさだけでなく、運動する楽しさも満喫できるので、低年齢の幼児には特に喜んでもらえますよ。
お子さんが走ったりジャンプしたりできるようになったら、この絵本の読み時です!
簡単なあらすじ
キリンが首をぐいーん、ゴリラが胸をどんどん、象が足をどしんどしん!
動物それぞれの特徴を上手く取り込んだ体の動き、それを隣で真似する子供達。
こんな動き、できる?
もちろん、できるよ!
さあ、一緒に体操してみましょう、うまくできるかな~~?
絵本の紹介
世にも素晴らしきグラフィックデザイン
「色の魔術師」と称されたエリック・カールさんが、独自のコラージュを駆使して創り出したイラストは、とってもカラフル!
全ての色彩が生命力と喜びに満ちていて鮮やか、光が弾けている錯覚すら覚えます。
そして、色のひとつひとつが絶妙に引き立てあう、ずば抜けた配色センス。
世界はこんなにも美しい色に溢れているんだよ、絵を描くってこんなに楽しくて自由なんだよ、とエリック・カールさんの声が聞こえてきそうではありませんか?
もしかしたら、本当に色の魔法がかかっているのかも……。
こんな素晴らしいグラフィックデザインを大判サイズで楽しめるんですから、この絵本は大人でも見応えがあります。
このカラフルな魔法の絵で、大胆にデフォルメされた動物達は、ペンギン・キリン・ワニ・ゴリラ・バッファローなど、裏表紙でポーズするフラミンゴを含めて、13種類。
象の巨体も、躍動するロバも、見開きのページ一杯に描かれていて、インパクト抜群。
小さな子供の視点から見たら、目の前一杯にどーんと広がるイラストは、さぞ迫力満点なんでしょうね~。
次は何の動物が出てくるんだろう、どんな体操をしているんだろう、とウキウキしながら、ページをめくる楽しさは格別です。
模倣の重要性
さて、その動物達からの挑戦状と言わんばかりに、「きみはできるかな?」と問いかけてられたら……そりゃあ、反射的に「できるよ!」と答えて、真似っこしたくなるのが、子供というものじゃないでしょうか。
そして、始まる体操ごっこ!
絵本を見る・聞くだ・読むだけでなく、体を沢山動かすアクティブな楽しみ方もある、というのは、素敵な発見ですよね。
そして、この「真似をする」というのは、子供の成長にとって重要なポイント。
日本語の「学ぶ」は語源が「真似ぶ」、つまり真似をする事から由来していると言われています。
実際、模倣は、進歩へ繋がる最初の一歩。
子供の模倣、つまり真似っこは大切な成長のプロセス……最初はうまくできなくても、繰り返して徐々に正確にできるようになる事で、身体的にも知的にも成長していく訳です。
この絵本は、体操の真似を通して、そのプロセスを踏み、上手に模倣していく為の練習台ともなってくれているんですよ。
ある意味、知育の前準備となっているのかも?
特に2~3歳の頃は真似っこ大好きなお年頃ですからね、この絵本が一層ハマりやすいはず。
最初は、うまく真似できない動きがあるかもしれません。
我が家の次男も3歳頃、肩の上げ下げが出来なくて、ぴょこぴょこジャンプしてました。
でも、今日はできなくても明日はできるかもしれない、明日はできなくても明後日は……!
上手く真似できるようになったら、1つ成長の階段を昇ったという意味。
更に、成長と共にできる動きが増えていけば、本人の達成感も得られて、自信へと繋がる自己肯定感を育てる事に繋がります。
たった1冊の絵本を読むだけで、こんなに色々子供の為になるなんて、素晴らしい~!
人種差別なき世界
この絵本の素敵だなあと思っているポイントを最後にひとつ。
それは、出てくる子供の人種が様々だという点。
動物達が色々出てくるように、出てくる人間の子供は、性別だけでなく、肌の色も、髪の色も、目の色も、ばらばらです。
黒髪黒目の黄色人種が主流の島国である日本に住んでいると、子供にとってはなかなか意識しにくいのですが、世界には様々な人種がいるんですよね。
そこをちゃんと描いているのは、さすがは様々な人種が集まるアメリカの絵本。
いや、アメリカでも他の国でも、人種差別は今なお解決の糸口が見えない、大変根深い問題ですよ?
日本人も、自分達が主流である自国では無意識下で「差別する側」に立っていますし、日本を一歩出れば、理不尽な思いを強いられる「差別される側」になるのが現実。
私自身、持ちたくはないと思っていても、心のどこかに差別意識があるであろう事は自覚しています。
でも、少なくとも、この絵本の中では、描かれている子供達は皆平等です。
皆同じように動物達と楽しく体操をするだけ、動物も人間も同じ命で対等な世界……少なくとも、人間と人間の間に差など存在していません。
それは絵本の中だけの理想かも。
でも、理想を頂いていなければ、実現はできない……子供が理想を知らなければ、成長していつか問題へ直面した時に立ち向かう事はできないのではないでしょうか。
私はこの絵本を読むと、世界にはいろんな人がいるんだよ、みんなが違うって事は素晴らしい命の贈り物なんだよ、と、理想の実現を願う言葉が心に響いてくるんですよね。
エリック・カールさんが実際にそんなメッセージを込めたかどうかはわかりません、あくまでも私の勝手な想像です。
ただ、私の息子達には、この絵本を通して、世界は広い、世界にはいろんな人達がいて、お互いの事を知って大事にするのはとても楽しいよ、と伝えていけたらなあ、と考えて読み聞かせをしています。
我が家の読み聞かせ
我が家では、長男2歳の時に大フィーバーした思い出の絵本です。
当時、まだ言葉も喋れなかった長男が、絵本をグイグイ押し付けてきて「んー!」とおねだり。
真似をしながらニコニコする姿がそれはもう可愛くて、癒やし、だったんですが……こちらが「もうやめてー!」とギブアップするくらい、本当に1日中エンドレスで読み聞かせリクエストされましたっけ。
読まないと、ひっくり返ってギャン泣き大暴れしたんですよね……。
一体、あの頃にトータル何回読んだのか、考えるとちょっと怖いかも。
当時、長男が通っていた保育園の2歳児クラスでも大人気の絵本で、保育士さんの読み聞かせに合わせて、みーんな一緒に真似をして体操するのは圧巻の光景でした。
体重の軽い2歳児といえども、集団でジャンプすると、床の振動がすごいんですよね。
自宅であんなにドシンドシンやられたら、たまったものではありませんけれど、保育園で見ている分には、可愛くて胸がキュンでしたよ。
その保育園で時々使われていたのが、この絵本を歌にしたCD。
『はらぺこあおむし』『月ようびはなにたべる?』との3本立てで、どれも絵本の文章をそのままメロディーに乗せてあります。
最初聴いた時、読み聞かせに思い入れが強かった私は「せっかくの絵本を読まずに、そんな風にするの~?」と否定的な印象を抱きましたが、どっこい、これがすごーくお役立ち!
文字が読めない幼児でも、歌に乗せると覚えやすいようで、すぐさま合唱できるんです(長男は発語がまだでしたので鼻歌でしたけど)。
絵本を見て歌いながら踊るという楽しみ方ができるようになるので、元々優れているこの絵本ならではのエンターテイメント性が増すんですよね。
これを最初に考えた人、グッジョブ!
読み聞かせ地獄にお疲れの親御さんがいらっしゃいましたら、どうしてもという時には利用してみてください。
お子さんの好みにハマれば、かなり助けになるかもしれません。
実際、私も、次男出産時の乳腺炎による高熱で何回か寝込んだ時は、この絵本の歌に助けられました。
とりあえず、絵本を渡して、歌を流せば、長男が集中してくれたんですよね。
それがごくわずかな時間だったとしても、布団から起き上がるのも辛かった私にとっては、息子の相手をしてもらえるツールがあるというだけで、どれほどありがたかったか……。
検索すれば、この歌を歌っている子供向けコンサート動画などがありますので、まずは試しに聴いてみてくださいね。
まとめ
この絵本がどれだけ素敵で、どれだけお役立ちか、少しでも伝えられたでしょうか?
まあ、小難しい事なんて考えなくていいんです、私のごにょごにょしたお喋りなんて、頭の中から一旦忘れてください。
この絵本の一番大事なメッセージは、「体を動かして楽しむ事」。
まずはお子さんと一緒に読みながら体操してみましょう。
一緒に読んで歌って体操すれば、大人も子供も運動不足も解消。
楽しいお家時間をお過ごしくださいねっ!
作品情報
- 題 名 できるかな?あたまからつまさきまで
- 作 者 エリック・カール
- 訳 者 工藤直子
- 出版社 偕成社
- 出版年 1997年
- 税込価格 1,320円
- ページ数 25ページ
- 我が家で主に読んでいた年齢 1~4歳(特に2~3歳がフィーバー!)