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絵本『ふらいぱんじいさん』旅するフライパンと広い世界へ出掛けよう

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風任せに世界を旅するフライパン、それがふらいぱんじいさん。

世界広しと言えども、ふらいぱんじいさんほど不思議な冒険を経験したフライパンはないでしょうね。

ふらいぱんじいさんの旅の話、じっくり最初から最後まで読んでみて下さい。

読めば、きっと心は遠い海の彼方へと飛んでいくはず……現実にはお出掛けも旅行も1人ではできない小さな子供でも、心はいつだって自由に旅に出られます。

家にいながら旅の楽しさを味わえる、それが読書の醍醐味ですから、ね?

 

 

 

簡単なあらすじ

卵を焼くのが大好きな、ふらいぱんじいさん。

奥さんが新しい鍋を買ったせいで、卵を焼かせてもらえなくなってしまいます。

思い切って台所を飛び出し、旅に出てみたら、外の世界はなんて明るく広いんだっ!

ふらいぱんじいさんの自由気ままな1人旅、さあ次はどこへ行ってみる?

 

 

絵本の紹介

第二の人生を探して……

主人公のふらいぱんじいさん、「じいさん」と付くだけあって、台所で長年活躍していた古い鉄のフライパン……人間ならば、結構な年配者です。

卵を焼くという第一線の仕事(?)は、後進の新人鍋に奪われ、泣く泣く二軍落ち。

更に、台所という狭い世界から出た事がないので、ある意味、箱入りですよね。

少々語弊を招く表現かもしれませんが、言ってみれば、セミリタイアを余儀なくされた世間知らずのお爺ちゃんです。

「もう卵は焼けないのか」としょぼくれるお爺ちゃん、もとい、ふらいぱんじいさん……なんだか、現実世界を連想して、ちょっと切ない……。

 

それが、「自分にもまだできる事があるかも」と勇気を持って外へ飛び出し始まるロードムービー!

猛獣が闊歩するジャングルも、月の砂漠も、風渡る草原も、母なる海も、全て踏破。

読んでいる側が驚くほどのアクティブさですね~。

台所にいた頃は想像もできなかったような出会いと別れを繰り返し、卵を焼く以外にも、自らの様々な可能性を見出していく……。

次はどんな出会いが待っているんだろう、と旅を楽しむその心に、卵を焼きたい未練はまだ少しあるけれど、今はもう、目の前の新しい世界へ夢中です。

最後に見つけた安住の地、第二の人生(フライパン生?)で、みんなに愛され必要とされているふらいぱんじいさん。

旅の思い出を胸に、それまでとは違う形で大好きな卵に関わっていくふらいぱんじいさんの未来は幸せな温もりに満ちていて、ちょっとクスッとくる結びが旅の終わりを告げます。

 

 

世界の広さを教えてくれるふらいぱんじいさん

いや~、この本、読んでいて、とーっても楽しい!

私も子供の頃に大好きな本でしたけれど、今改めて読むと、ふらいぱんじいさんの旅には、子供達への胸が温かくなるようなメッセージとエールが沢山込められてるのに気づきますよ。

上から目線とか説教臭さはゼロ。

仕事や趣味に打ち込んでいる人の背中を見て、「楽しそうだな」「自分もやってみようかな」「あんな風になりたいな」と刺激されたり、憧れたりする事があると思うんですけど、まさにそんな感じ。

ふらいぱんじいさんの自由を謳歌し、出会いを楽しむ旅の姿を見ていると、新しい世界へ飛び込む勇気を分けてもらえる気になってくるんですよ。

 

子供の世界は、幼稚園や保育園、小学校、家などに区切られた小さな世界になりがち。

例外もありますが、その人間関係は基本的にごく狭い範囲で完結しています。

その狭い世界でこれから息苦しい思いをする子もいるでしょうし、自分の世界を広げていくのに戸惑い躊躇う子もいるでしょう。

もちろん、大人から見れば、成長と共に少しずつ人間関係を広くなっていく訳ですが、まさに今成長している真っ只中の本人達に、そんな事を自覚する機会はなかなかありません。

 

本来、人間は相手ごとに違う複数の顔を持っているもの……相手は家族・友人・学校・職場で接する人々だけに留まらず、ちょっと挨拶するだけの顔馴染みの店員さんに至るまで、深い浅い関係なく、それぞれの人間関係の輪で、それぞれ違う顔を自然に使い分けてます。

家では甘えん坊の子供が学校ではしっかり者として振舞って、人間関係ごとに顔を使い分けているというのは、よくある話ですね。

この人間関係の輪をいくつも築き、違う顔をいくつも持っているというのは、自分の心に多様性を持つという事。

 

心に多様性を持っていれば、広い視点を持ちやすくなりますし、新しいものへの挑戦も自然と増えて、自分の世界をもっと広げられます。

ひとつふたつの人間関係の輪でうまくいかない自分がいたとしても、他の自分がいる事やその人間関係だけに固執する必要がないのを知っている事で、逃げ道をいくらでも用意できるので、心の安定を保てます。

視野が狭くならずに済むんですよね。

でも、それをどうやって子供へ伝えていくか……理屈で説明した所で、子供にうまく伝わるはずもありません。

 

そこで、このふらいぱんじいさんが力になってくれるという訳ですよ!

ふらいぱんじいさんの旅は、きっと子供達の小さな世界へ風穴を空けてくれます。

何歳だろうと、新しい挑戦はできる、年齢なんて関係ない。

今がうまくいかなくても、楽しい事、面白い事、やってみたい事はきっと見つかる。

今いる場所じゃなくても、他に自分の居場所がある。

世界は広い、新しい出会いが沢山待ってるよ……自分のペースでのんびりゆったり旅をするふらいぱんじいさん、身をもってそれを示してくれています。

絵本や児童書が持つ物語の力、頭ではなく心に伝える力をふらいぱんじいさんも持っているんですね。

 

 

可愛いイラストにご注目

どんな創作物も作られた時代の影響は大なり小なり免れないものですから、何かしら時代の影を映しているものなのですが、『ふらいぱんじいさん』にはその影がほとんど見当たりません。

例えば、この表紙、とってもカラフルで可愛くないですかー?

 

 

 

1969年初版とは思えぬポップさ、50年以上経った今でも色褪せないセンスですよね。

一切の古臭さがないアートな表紙は、思わずジャケ買いする方がいらしてもおかしくないくらい。

中の印刷は基本モノクロですが、絵の可愛らしさは変わらずに楽しめます。

文章も、明るく陽気なふらいぱんじいさんの性格を映すように、歌うようなリズムに満ちて、ほんわかとした雰囲気の読みやすい言葉の数々。

古臭さがほとんどないので、昔も今も変わらずに、子供達が自然に想像の世界へ飛び込めるのは、良書の証ですね。

 

94ページのボリュームで、一見すると児童書ですが、半分を絵が占めます。

文章は全てひらがなのみで、文字が大きめ。

ページを開けば必ず絵が描いてあり、見るだけでも楽しめる作りですので、早ければ年中さん、絵本から児童書への移行初期、自分で読み始める年頃に読んでみて下さいね。

 

 

姉妹作『はらぺこおなべ』

なお、『ふらいぱんじいさん』と対になっている作品が、『はらぺこおなべ』。

こちらも台所を飛び出す古い鍋、おなべのばあさんが主人公ですが、その動機も旅路も結末も、のんびりほっこりのふらいぱんじいさんとは対極的です。

ふらいぱんじいさんが牧歌的なロマンチストの旅人なら、おなべのばあさんは非情なリアリストの放浪者。

両者の違いがとっても面白いので、機会がありましたら、ぜひセットで読んでみて下さいね。

皆様はどちらがお好きでしょうね、じいさん派?それとも、ばあさん派?

 

 

我が家の読み聞かせ

私が子供の頃に大好きだった本でして、息子達への読み聞かせにかこつけて、自分も楽しもうと購入。

ルンルン気分で、読み聞かせしてます。 

読み聞かせる時のイメージとしては、人形劇のように感情の起伏豊かに、愉快に、メルヘンに~。

ふらいぱんじいさんのおおらかさと旅のゆったりしたリズムは読んでいると、勝手にテンションがあがってくるので、読み聞かせ終わった後の私はご機嫌です。

好きな本を読むのって、楽しいですねー!

 

 

息子達の目には、ふらいぱんじいさんの風任せな旅が眩しく映るようで、自分達も大きくなったら世界中を旅したい、と口にします。

ただ、5歳次男は「ぼく、泳げないから、海には行けないよ、そしたら、おにーちゃんに置いていかれて1人になっちゃう、いやだ~~」と半べそかいた事が。

7歳長男、頼られて嬉しいんでしょうね、満更でもない顔で「大丈夫、ぼくも泳げないから、一緒に残るよ!」と次男を励まし、手を取り合ってました。

いや、泳げるように練習しなよ……と母としては思いますが、2人がまだ見ぬ世界の不思議へ思いを馳せてワクワクしているのは、見ていて嬉しいですね。

なお、2人が旅に出るのは23歳になってから、その場合は私も夫も一緒で、車に乗って出かけるそうです。

いや、それ、ただの家族旅行じゃない……?

 

まとめ

ひとつ、この本の難点を挙げるなら、台所でクヨクヨするふらいぱんじいさんへ旅に出るように背中を押した存在が、私の大嫌いな虫ゴ○○○、という点ですね。

思いっきり個人的な難癖ですみません、でも、そこはせめてネズミにしてほしかった、○キ○○は本当にイヤーーーッ!

 

……と、○○ブリ問題以外は文句のつけようがない、素敵な本『ふらいぱんじいさん』。

ぜひぜひ、この本を読んで、ふらいぱんじいさんと一緒に世界を旅する楽しさを味わってほしいです。

世界は広い、世界は明るい、世界には新しい出会いが待っている!

子供達がいつか成長して大人になった時、目の前の世界へ踏み出していく時、新しい挑戦をする時……本人達はは気づかなくても、きっと記憶の奥底に眠るふらいぱんじいさんとの旅の思い出が力になってくれる、と私は信じています。

 

 

作品情報

  • 題 名  ふらいぱんじいさん
  • 作 者  神沢利子(文)・堀内誠一(絵)
  • 出版社  あかね書房
  • 出版年  1964年
  • 税込価格 990円
  • ページ数 94ページ
  • 我が家で主に読んでいた年齢 6~7歳(絵本から児童書への過渡期にどうぞ)