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絵本『いいタッチわるいタッチ』初めての性教育にオススメの名著

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小さな子供への性教育の入口として、最初に読み聞かせる絵本なら、こちらをどうぞ。

最初は「幼児に性教育!?」なんて驚くかもしれませんね。

でも、お願いですから、「うちには関係ない」「幼児に性教育なんてとんでもない!」と心のシャッターを閉めずに、1度読んでみてほしいのです。

性教育とは、単に性知識を身につける事ではなく、自分の心と体を大事にする事から始まる、大切な教えなんですよ。

読めば、こんな基本的な事も性教育の一環なの?、と目から鱗。

性被害や暴力から子供の健やかな心身を守る為に、性教育が果たす役割がどれほど大きなものか、この絵本は大人にとっても考えるきっかけになってくれる良書です。

 

 

 

簡単なあらすじ

双子のアミとラン、友達のニキちゃん親子に誘われて、プールへ行きます。

プールで遊ぶ前に、ニキちゃんのママから大切な話を聞きましょうね。

それは、いいタッチ、わるいタッチ、2つのタッチのとっても大切な話~。

 

 

絵本の紹介

まずは自分を大事にするとは何かを学ぼう

この絵本は、3歳頃から読む事ができる幼児向け性教育の絵本です。

「性教育」と言っても、具体的な性知識を説く訳ではありませんよ。

描かれるのは、自分の身体を大事にしようという呼びかけ。

「え、それだけ?」と拍子抜けした方もいらっしゃるかもしれませんね、でも、これだって立派な性教育の一環です。

 

 

まず、最初に前提として語り掛けられるのが、このセリフ。

 

くちと みずぎでかくれるばしょは じぶんだけの たいせつな ばしょ。

さわっていいのは じぶんだけなの。

(引用元:復刊ドットコム 安藤由紀 著『いいタッチ わるいタッチ』2016年出版)

 

今は性器などを「プライベートゾーン」と称する呼び方も浸透してきましたが、小さな子供へ最初に教えるには、上のような説明が具体的でわかりやすいですよね。

個人の尊厳に関わる大切な場所、大事にしてほしい場所を示し、自分以外の他者には触らせてはいけない、と説明。

プライベートゾーンを「大切な場所」と定義して教える事で、子供に自分の身体を大切なものとして意識してもらえる出だしです。

 

続けられる言葉は、2つのタッチ、身体的接触の明確な違い。

お父さんお母さんの抱っこなど幸せな気持ちになる「いいタッチ」、あなたの大切な場所を触ったりして嫌な気持ちにさせる「わるいタッチ」。

あなたを大切に思っているのが「いいタッチ」、あなたを大切に思っていないのが「わるいタッチ」。

2つのタッチの違いを子供が共感しやすい言葉で説明しています。

ちなみに、キックやパンチもわるいタッチだよと描いているので、暴力への注意喚起にもなっていますよ。

 

 

性知識のない小さな子供にとって、そもそも性被害とは何か、何が悪くて何がダメなのか、理解は難しいですよね。

悪意を持って身体を触られた所で、幼児には何が問題なのか判断がつきません。

ならば、まずは性教育の前段階として、自衛を教えるのが先決!

プライベートゾーンの尊重、次に2つのタッチの教えにより、プライベートゾーンへの身体的接触を制限する。

これらを教えるだけでも、幼児にとっては性教育への第一歩、身を守る為の第一歩です。

 

 

最後をしめくくる一節はこちら。

 

じぶんのこころは じぶんのもの。

じぶんのからだは じぶんのもの。

(引用元:復刊ドットコム 安藤由紀 著『いいタッチ わるいタッチ』2016年出版)

 

例え、乳児だろうが、幼児だろうが、個人の人格も身体も、本人だけの大切なもの。

親であっても、別人格であり別個体であるからには、尊重しなくてはいけません。

「いいタッチ」「わるいタッチ」を判断するのは、結局個人の判断……それを決めるのは子供本人の心。

自分の心も体も、どう守るかは自分で決めていい、誰にも自由にさせない。

それを端的に表現しつつ、大きく包み込むような愛情を感じさせる結びには、子供はもちろん、大人にも気付きをもたらしてくれますね。

 

 

 

……ここまでの説明を読んでみて、いかがですか?

これならば性教育に抵抗感を感じる方でも、読み聞かせのハードルがかなり低いのではないでしょうか。

主人公は犬の子供達ですから、読み聞かせる側の大人が戸惑うような絵の生々しさはなし。

作中に出てくる生殖器に関する用語は1箇所、それもサラッと胸やお腹と列記して一言、「せいき」と触れているだけです。

 

まずは、自分を大事にする事を伝える。

「いいタッチ」は受け入れてもいいけれど、「わるいタッチ」は断固拒否!

あなたを大事に思っている人がいるよ、嫌な事は嫌と言っていい、と伝える。

それだって性教育の第1歩、性被害に遭わない為の防犯に繋がるんです。

 

 

実はリクエストで復刊した絵本

この絵本は元々出版が停止していましたが、その内容の良さを支持する方々のリクエスト投票により復刊した経緯があります。

復刊後は口コミでも人気を集め、2021年11月時点で第14刷までされているほどです。

それも納得の読みやすさ!

私も最初、初めて読む性教育の絵本に神経ピリピリしながら読んだのですが、読み終わった後はむしろ「これだけでいいんだ~!」と肩の力が抜けました。

それでいて、描いてあるのは、性だけに留まらないとっても大事な内容ですからねえ。

確かに、この絵本は、大変優れた性教育絵本です。

むしろ、これがなぜコンスタントに重版されなかったのでしょう……?

世間一般の性教育に対する意識は近年変わりつつあり、その流れが復刊へ繋がってくれて、本当に良かったと思える1冊ですね。

 

巻末には5ページに渡って、大人に向けた、子供の性被害を防ぐ為の説明文が掲載されています。

小さな子供には読みにくいように、漢字にルビは振られていません。

こちらもぜひ目を通して、これからの性教育をどのようなスタンスで臨んでいくか、参考にしてみてくださいね。

 

 

子供を性被害から守る為に

子供の性被害のニュースは、見聞きするだけでも、本当に辛く痛ましいものです。

抵抗する力も知識もない子供をターゲットにする卑劣な犯罪は、絶対に、許せない!

このブログでは書けないような罵詈雑言を胸中にしまいつつ、大人として子供を守っていかなければ……と常々思っているのですが、どうやって守っていくか、は今まさに私自身もちびっ子兄弟相手に試行錯誤中。

 

性被害は大人だけではなく、子供同士でも起こりえます

性別も年齢も場所も関係ありません。

誰でも、被害者になるだけでなく、加害者になる可能性だってあります。

性被害の内容も、今ではネットやSNSでのデータ拡散など、その種類は増える一方。

子供自身が被害を受けている時点で、何が起きているかを理解しておらず、後になって気づく例も多いですよね。

親としては心配の種は尽きません……。 

 

しかし、成人するまで24時間子供にべったりくっついていくのは不可能です。

では、親の目の届かない範囲ではどうしたら良いのか?

子供自身にも、自分の身を守る意識、他者を尊重する意識を身につけてもらうように導いていかなければなりません。

更に、デマや思い込みのない正しい性知識を身につけられたら、性被害関連だけではなく、妊娠出産における悩みやトラブルの軽減、将来のパートナーとの円滑な関係構築、様々な性に関する見方などにも役立つ、はず。

実際に、どこまで親が関わるかは家庭の方針次第ですが、我が家では性教育はやれる所まで臨んでいく方針。

この絵本は、その最初の一歩として最適だと考えて、読み聞かせしてます。

 

 

我が家の読み聞かせ

この絵本を初めて読んだのは、長男6歳・次男4歳の頃ですが、2人とも絵本内容がすーっと頭に入ったようです。

さすがの読みやすさと申しましょうか、プライベートゾーンを自分で洗うという意識、大切にしていかなければいけないという意識も、1~2日で身に付きましたよ。

 

この絵本では、水着で隠れる場所がプライベートゾーンと指している為、男の子の場合は胸が含まれていません。

そこは男女関係なく含めておいて欲しかったと思うので、ちょっと惜しい点ですね。

その為、我が家では追記する形で、口・胸・お尻・性器をプライベートゾーンとして教えています。

 

読み聞かせが終わった後は

私  「はいっ、ここでクイズ!プライベートゾーンはどーこだ!?」

息子達「くちっ、むねっ、おしりっ、おちんち〇っ!」

私  「プライベートゾーンは~~!?」

息子達「見せちゃダメ、触らせちゃダメーっ!」

とジェスチャーしながら掛け合いをするのがお約束。

うむうむ、しっかり身について何よりです。

ただ、兄弟喧嘩をすれば「おにーちゃんの手がぼくのお尻に当たった、プライベートゾーンだよ!」と騒ぐのを仲裁するのをがちょっと面倒なのは、想定外でした……。

まあ、それだけ意識がしっかりついたという事でしょうかね。

 

 

我が家ではこの絵本以外にも、成長の段階ごとに他の性教育絵本を活用しているのですが、幼児は余計な性知識がない分、内容を素直に受け止めてくれますね。

図鑑を読んでいるのと同じ感覚で性教育絵本を読み、描かれる内容も生物として当たり前の現象、という扱い。

これが思春期だったら、照れる・ひねくれる・反発するのオンパレードで、まともに受け止めてはくれなかったろうなあ……と思うと、今時点で早めに話をしておいて良かったなと感じます。

 

性教育絵本への考え方については、雑談カテゴリの別記事で詳しく取り上げようかと検討していますので、いずれアップする予定。

お楽しみに~(?)。

 

 

まとめ

お断りしておきますが、性教育に関する方針は各家庭で違いますから、どうしても家庭でやらなければならないと強制されるものではありません。

性教育と聞いて、強い抵抗感を持つ方がいらっしゃるのも、よくわかります。

私も抵抗感が全くないと言えば、嘘になります……なにしろ、自分だって小さい頃にろくな性教育を受けてはいないのですからね。

今でも、これでいいのかという悩みや多少の気後れはあるんですよ。

そもそも、学校の保健体育の授業にて、最低限の知識(本当の本当に最低限ですが)は得られますし、教育という形ではそれで何とかなってきたのが日本の性教育。

そちらに丸投げしてしまっても、一応どうにかはなるでしょう。

 

でも、もし、我が子に身を守る術を少しでも身につけてほしい、性教育をきちんと受けて自分自身とこれから関わる人達を尊重できるようになってほしい、とお考えでしたら、この絵本は最初の力強い助けになってくれます。

抵抗を感じて悩んでいる方でも、この絵本ならば内容的にも手に取りやすいですから、1冊だけなら……という気になれるかもしれません。

どうぞ、じっくりと考えてみて下さい。

 

君は大切な存在だよ、君を傷つけようとする人がいたら必ず助ける、だから君も自分を守ってね……。

このメッセージが、この絵本を手にする子供達の心へ真っ直ぐ届きますように。

子供達の身体と心を守る助けとなってくれますように。

 

 

作品情報

  • 題 名  いいタッチわるいタッチ
  • 作 者  安藤由紀
  • 出版社  復刊ドットコム(岩崎書店)
  • 出版年  2016年(2001年)
  • 税込価格 2,200円
  • ページ数 32ページ
  • 対象年齢 幼児
  • 我が家で主に読んでいた年齢 4~7歳(3歳から読むのも〇)