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絵本『ずーっとずっとだいすきだよ』愛犬の死が教えてくれる大切なコト

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愛犬の死を通し、愛情を相手に伝える大切さ、命の尊さを教えてくれる絵本。

大好きな気持ち、ずっと一緒だよ、という想いを言葉にして伝える事がどれだけ大事なのか……。

「ぼく」とエルフィーの物語は、楽しかった思い出と、別れの悲しみと、これからもずっと変わらない愛情で紡がれています。

 

ペットを飼っているご家庭ならば、特に心に刺さるものがあるかもしれませんね。

どんなに大好きでも、生きられる時間が違う以上、いつか必ず訪れる別れ。

切なさMAX、読み聞かせていて目がウルッとしてしまうかも……。

 

そして、愛情を伝える相手はペットだけではありません。

それは人間が相手でも同じ……皆様は大切な人にきちんと愛情を伝えていますか?

 

 

 

簡単なあらすじ

エルフィーはぼくの犬。

一緒に大きくなって、一緒に遊んで、一緒に眠る、大好きなぼくの犬。

でも、ぼくがどんどん背が伸びる一方で、エルフィーもどんどん年を取っていく。

散歩も億劫がり、階段も登れなくなったエルフィーに、ぼくは毎晩必ず伝えてきた。

「ずーっと、だいすきだよ」って。

そして、ある朝、エルフィーは……。

 

絵本の紹介

”ぼくの犬”へ贈る愛情の形

この絵本は、過去形で語られるエルフィーとの思い出から始まります。

お互いに赤ん坊だった「ぼく」とエルフィーが共に成長し、自由に駆け回り、最高の遊び相手として、家族として、過ごした日々。

それは、寝床代わりのバスケットにちょこんと乗るサイズだった小さなエルフィーが、バスケットからはみ出さんばかりに大きくなるほどの長い時間。

でも、エルフィーにとっての長い一生の時間は、「ぼく」にとっては、ほんの短い子供時代の時間でしかありません。

年老いたエルフィーはまだ子供の「ぼく」を置いて、死んでしまいます。

 

エルフィーは家族のみんなに愛されていましたけれど、愛情をエルフィーへ言葉にして日々伝えていたのは「ぼく」だけ。

エルフィーとの永遠の別れの悲しみに涙していても、「ぼく」はエルフィーが幸福だった事を疑っていません。

人間と犬とでは言葉が通じなかったとしても、「ぼく」はエルフィーを”ずーっとだいすきだよ”と伝え続け、エルフィーが「ぼく」の愛情を知ってくれていた、と信じているから……。

そして、「ぼく」自身も、伝えたい相手にきちんと気持ちを伝えられていたおかげで、別れの悲しさはあっても、心残りはありません。

惜しみない愛情を注ぎ、毎日言葉で絆を結んできたエルフィーは、まさしく”ぼくの犬”だったんですね。

 

 

言葉の重要性をとことん考える

うーーん、深い……!

これ、ペットだけでなく、人間相手にも通じる話で、心を言葉で伝える重要性を子供へわかりやすく伝えています。

 

わざわざ言葉を口にしなくても気持ちが相手に伝わる、というのは、私は半分幻想だと思ってます。

日本のように「察する」文化が発達している場合、相手の思いや状況を慮るのは、普段からごく自然に身についている共通の習慣とも言えますが、それでも、テレパシーみたいにわかる訳ではないですし、誤解やすれ違いをなくす事もできません。

ましてや、日本のように「察する」文化がない国では、言葉で明確に意思表示しなければ、相手に伝わる可能性は非常に低い……!

 

どんなに深い愛情を抱いていても、伝わらなければ、それは相手にとってゼロ、存在しないも同然です。

例え、察したとしても、それは確証がある訳でもなく、不安定なもの……。

ただでさえ目に見えない心を相手に少しでも伝える為には、やはり真摯に言葉を尽くす努力が必要なんですよ。

「大好きだよ」と言葉で伝えようとする努力する行為そのものも、相手への愛情表現のひとつ。

エルフィーは犬ですから、言ってもわからないかもしれませんが、そもそも言わなければわからない!

大切な言葉を伝えられなかった、という悔いを残さない「ぼく」はその努力を怠らなかったのだと思うと、その悲しい中でもどこか晴れやかな語り口には納得です。

 

 

また、親の立場で読むと、エルフィーと「ぼく」の関係には、子供と大人の関係も透かして見える気が……。

エルフィーの一生が長いようで「ぼく」には短かい時間だったように、人生で愛情を最も必要とする人間の子供時代は、本人達には長いようでも、大人にとってはあっという間に過ぎゆく時間。

後回しにする事なく、今この瞬間に愛情を伝えなければ、相手にとって必要な時に言葉が届かないかもしれない……と思うと、ちょっと考えさせられるものがありますよ。

 

 

それに、”ずーっと、ずっと、だいすきだよ”という題名にもなったこの言葉、とても胸を打つとは思いませんか?

ただの「だいすきだよ」ではないんですよ。

思い出が詰まった過去や、今まさに一緒にいる瞬間だけでなく、これからの未来で例え別れが訪れても、ずっと忘れないよ、ずっと大好きだよ……そんな誓いの言葉にも似た愛情の言葉。

頭で考えてるだけでは相手に伝わらない、言葉に出してこその「ずっとずーっとだいすきだよ」に込められた愛おしさ。

どんな命もいつかは終わるからこそ、後悔がないように今を大事にして愛情を伝えてほしい……そんなメッセージが込められているように感じます。

 

この絵本は、気持ちを直接表現するのが苦手と言われる日本人にこそ、特に読んでほしい!

私は好きな気持ちやいいなと思った事は日々口に出して相手へ話すように心がけていましたので、この絵本を読んだ時は、まさに膝を打つ思いでした。

私が大人になってから気づいた事をこの絵本は子供達へ向けて、とっくの昔に教えてくれていたんですよ……もっと早く、自分が子供の頃に、この絵本に出会いたかったな~~。

 

ペットとの関係性を学ぶ

もちろん、ペットとの関わりを教えるのにも、有効な絵本だと思いますよ。

犬・猫・小鳥・ウサギ・カメ・トカゲ……ペットは様々な種類がいますが、どのペットも縁あって人間の家に来てくれた命です。

当たり前ですが、どの動物もそれぞれたったひとつだけの命であり、他と代わりは利きません。

可愛がっていた犬を犬種が一緒なら他の犬と取り替えても同じでしょ、という事はありませんよね?

「ぼく」にとっても、子供時代の”ぼくの犬”はエルフィーだけです。

 

本来、どの命もかけがえのないもの。

この絵本を読む事で、代わりの利かない命の喪失を通して、命の大切さとペットを飼う責任を教えるきっかけを得られるのではないか……と考える次第。

ペットを飼っていない我が家には、この絵本に教えられるものがいくつもあります。

ペットを飼っているご家庭では、実感するものも多いのでは?

 

我が家の読み聞かせ

7歳と5歳になる我が家の息子達、まだ身近な存在の死を経験した事がありません。

蟻を踏んでしまったり、メジロの死骸を見つけたり、など、生き物の死を目にした事はあっても、それは息子達にとって「大切な存在の死」ではないんですよね。

親族を始めとする息子達と関わりある人々は皆幸いにも息災ですし、我が家ではペットを飼った事もないので、彼らにとって、死はどこか絵空事です。

7歳長男は「おかーさんはいつか死んじゃうの?ぼくが70歳になっても生きている?」と言って、未来の別れを想像しては、べそべそ泣くようにはなりましたが、現実での経験も死への深い理解もまだまだ浅く……5歳次男に至っては、言わずもがなですね。

その息子達には、ぼくとエルフィーとの別れ、愛を伝える言葉の重み、相手に自分の想いを伝える事でどう心が救われるか、などはまだまだ理解の範疇外。

 

しかし、何かを感じ取っているのは確かで、読み聞かせが終わると質問攻めがスタート!

 

年を取ると、走れなくなるの?

犬って人間よりすぐに死んじゃうの?

なんでエルフィーを庭に埋めるの、かわいそうだよ?

お墓を作るのは何のため?

どうして、「ぼく」は代わりの子犬をいらないと言ったの?

死んじゃったエルフィーはどうなるの、おしまいなの?

 

子供なりに引っかかりを覚え、次々疑問が湧いてくる模様。

それに対して、私は科学的な答え(犬は人間より寿命が短い等)があれば、具体的に説明しますが、人の心が関わる問いには答えを提示しません。

「どうなったと思う?」と逆に聞いて、自分で考えるように促します。

人の心に関わる問いに答えを出そうとするのは、哲学。

哲学は自ら見出す事に意義があるのであって、人に与えられるものではありません。

今すぐ答えを出すのが正解ではなく、ゆっくりでもいいから自分の中で沢山考えるのが大事……と私は考えているので、安易に答えないようにしています。

 

息子達はスッキリしない顔をしますけどね~。

でも、いっぱい疑問に思って、いっぱい自分で考えるのは、読んだ絵本が心の糧になっている証拠!

ペットを飼った経験がなくたって、人間には想像力があるんですから、「ぼく」とエルフィーの絆がどういうもだったのか、どうして「だいすきだよ」という言葉を伝え続けていたのか、いつかはぼんやりとでも理解できるかもしれません。

大切な存在の死に直面した時に後悔しないように、大切な存在へ自分の気持ちを真っ直ぐ伝えられるように、この絵本にまつわる記憶が息子達の助けになってくれたら、いいなあ……私はそんな想いを抱えながら、読み聞かせてます。

 

 

まとめ

この絵本、とても心に沁みる素晴らしい絵本です。

命を巡る大切なメッセージが込められているから、子供だけでなく、大人にも読んでほしい!

少なくとも、私はこの絵本に出会えて良かったと、心から思っていますよ。

私は元々、意識的に家族への愛情を言葉にする方でしたが、この絵本を読むようになってからは、息子達へ毎日掛ける「大好きだよ」「世界で(宇宙で)1番可愛い男の子だよ」「おかーさんの宝物だよ」の言葉ひとつひとつに、どうか伝わりますように、と心を込めて、口にするようになりました。

もしもの時があったとしても、大好きな存在へ大好きの気持ちがきちんと伝えられて、悔いを残さないように、そして、幸せな思い出だけが残るように……。

普段ぼんやりとは頭の隅に浮かんでいても、正面から考えた事のなかった想いが、はっきりと像を結んだのは、『ずーっとずっとだいすきだよ』を読んだおかげです。

 

皆様も、もし、この絵本を読み聞かせする機会があれば、お子さんを「大好きだよ」と抱きしめてあげて下さい。

もしペットを飼っていたら、そのコにも、お子さんと一緒に「ずっと大好きだよ」と沢山伝えてあげてほしいです。

 

 

作品情報

  • 題 名  ずーっとずっとだいすきだよ
  • 作 者  ハンス・ウィルヘルム
  • 訳 者  久山太市 
  • 出版社  評論社
  • 出版年  1988年
  • 税込価格 1,320円
  • ページ数 32ページ
  • 我が家で主に読んでいた年齢 4~7歳(ペットを飼っているご家庭は必見!)