間違う事は恥ずかしい事なんかじゃない!
数多の失敗があってこそ、ひとつの成功へ繋がっていくものですよね。
失敗は成功の素。
間違いを笑わず、明日へ繋げていこうとする、熱い教育への理念が込められた絵本。
「遊び」から「学び」にシフトする小学校低学年、初めての小学校に戸惑う事が多い1年生にぜひ読んでほしい1冊です。
絵本の紹介
間違いは恥ずかしい事なんかじゃない!
学校の教室にずらっと居並ぶ皆の前で間違ってしまった時の恥ずかしさ、いたたまれなさ、後から「ああすればよかった、こうすればよかった」とアレコレ悔やむ気持ち。
皆様は経験がありませんか?
私はあります、それも山ほど……。
大人の今になっても、時々思い出すと、「あ”あ”あ”~~」と身悶えしたくなりますよ、もうどうしてあの時~~~、ってね。
これが今まさに学校へ通う現役の小学生だったならば、その悶えっぷりは比ではないはず!
引っ込み思案な子だったら、人前での失敗なんて、特に嫌になりますよね。
クラスのみんなに注目を浴びて間違うとか、恥ずかしすぎる、嫌すぎる!
大人から見ればささやかな失敗でも、子供にとってはちょっとした挫折にすら繋がりかねない重大事です。
その経験が積み重なっていくせいか、自意識過剰になっていくせいなのか、小学校高学年や中学校辺りからは教室で手を上げる生徒の数が急降下していくんですよね。
答えがわかっていても、自分の意見をそれなりに持っていても、万が一間違うのが嫌で恥ずかしくて、下ばかり向いている子……皆様は覚えがありませんか?
でも、教室では間違って当たり前!
知らない事はこれから知ればいい。
間違えたなら、いつかは正しい答えに辿り着けばいい。
沢山、沢山、間違って、その中から本当の事を見つけていけばいい。
間違いを恐れて、そのまま立ち止まっていたら、ずっと間違ったままになってしまう。
この絵本では、教室こそ、子供達が安心して間違いを繰り返していくべき場所だと繰り返し訴えかけます。
間違わない人なんているの?
間違いを笑う人は、今まで間違った事がないの?
そんな訳がないんですよ、どんな立派な人でも絶対にやらかしてるんです。
それを端的に叫ぶ一文がこちら。
神様でさえまちがう世の中
ましてこれから人間になろうと
しているぼくらがまちがったって
なにがおかしい あたりまえじゃないか
(引用元:子どもの未来社 蒔田晋治・作 長谷川知子・絵「教室はまちがうところだ」2004年出版)
もうね、本当に、心の底から、その通りだと賛同しますよ。
間違いを繰り返しながら、それでも前に進んでいくのが人間ですよね。
今明らかになっている科学や医学、様々な現代の技術の数々も、星の数ほどの先人の「間違い」の元に導き出されたものばかり……多くの人々が試行錯誤を繰り返してくれたからこそ、今の私達がその結果としての恵みを享受できている訳です。
ましてや、この絵本が呼びかけている相手は、大人になる成長途中の子供!
生まれた直後は動物と変わりのなかった赤ちゃんが成長して、子供になって、そして学びを通して、「人間」へなろうとしている……人生も道半ばの子供達が間違っておかしい事なんて、どこにもありません。
この絵本では、遠回りしてもいいよ、みんなの成長を成功も失敗も丸ごと受け止めるよ、一緒に何回でもやってみようよ、と先生目線の語り口で、子供達の背中を押してくれます。
こんな温かな眼差しを持つ先生と学生時代に巡り会えたら、それはきっと素晴らしい出会いでしょうね。
元々は教師が学級通信に書いた詩
元々は、長年教育に携わってこられた蒔田晋治さんが1967年に学級通信にて書いた詩でして、それに挿絵を添えて絵本化した1冊。
子供向けの詩としてはちょっと、いや、かなり長い……。
でも、これから学んでいく子供達を励まし支えたいという熱い想いが迸る言葉のひとつひとつが、読む者の胸にずどんと響いてきて、冗長さは微塵も感じません。
教育関係者の方からも評価されており、教室に貼りだしたり、子供達に読み聞かせたり、クラスのスローガンにしたりなど、昔から様々な形で学びの場にて取り上げられてきた古典的作品です。
古い詩ですので、正しいとは何か、間違いとは何か、答えが出ない問いはどうなるのか……を考えると、今の多様性が叫ばれる時代にそぐわない一面を感じ取る方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、この詩の伝えたい想いの核はそこじゃない!
間違いを恐れて、萎縮してほしくない。
間違いを責めたり責められたりするのではなく、間違いを糧にして明日に臨んでいってほしいという未来志向の想い。
それがこの絵本の核です。
日本の教育状況については、昔から賛否両論、様々な意見が寄せられてきました。
詰め込み教育やゆとり教育などの方針や、校内暴力・いじめ・不登校・モンスターペアレントなどの問題、ITや英語などの導入など、どんな時代であろうとも、問題・課題が必ずあります。
教育現場で必死に立ち向かう関係者の方々の事を考えれば、どのテーマも、私が無責任に書き散らすのは憚られるものばかり。
でも、どんなに時代が変わり、教育現場が変わろうとも、この絵本の題名通り、「教室はまちがうところだ」というのは変わらない……ある意味、真理だからこそ、半世紀以上もこの詩が支持され続けているのでしょうね。
我が家の読み聞かせ
穏やかな性質ではあるものの、妙な部分で引っ込み思案な長男の小学校入学は、親として少々心配でしてね……。
学校では間違いを恐れず笑わず、のびのびと過ごして欲しいと思い、入学を機に読み聞かせました。
読む時についつい力が入ってしまう親バカ状態。
長男、当初はきょとんとした顔をしていたものの、2年生に進級した最近では、リクエストによく持ってきます。
息子自身思う所があるのか、「ぼくたち、まちがってもいいんだよね!」と連呼。
そうだねー、失敗を繰り返して、そして前へ進むのが人間だからねー。
みんなそうやって大人になっていくんだもの、君もぜひ沢山間違って、試行錯誤してみてね、と心を込めて読み聞かせ~。
次に我が家でこの絵本を必要とするのは、5歳次男ですね……来年には小学校に入学、ピカピカの1年生!
うわー、これまたちゃんと教室でやっていけるのか、親としては心配です。
親の心配って何歳になっても尽きないんでしょうけど……まずは、幼稚園とは異なる環境、明確な学びの場としての学校で居場所を築いていけるように、この絵本を読み聞かせて、母として応援したいですね。
まとめ
小学生向けとして紹介してきましたが、この絵本は、中学生や高校生、大学生など、学び舎に通う全ての生徒達に共通するメッセージ性が込められています。
教育者を目指す方にもぜひ1度は読んでほしいです。
小さな子供向けの体裁を取ってはいても、詩として綴られた教育への情熱は年齢を問わず、心へ伝わるはず。
どうか、学ぶ勇気を必要とする子供達、全ての生徒達の元へ、この絵本の言葉が届きますように……。
作品情報
- 題 名 教室はまちがうところだ
- 作 者 蒔田晋治(文)・長谷川知子(絵)
- 出版社 子どもの未来社
- 出版年 2004年
- 税込価格 1,650円
- ページ数 約30ページ
- 我が家で主に読んでいた年齢 6~7歳(新一年生にはぜひ!)