絵本むすび

ちびっ子兄弟へ贈る絵本・児童書の読み聞かせブログ

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絵本『チムとゆうかんなせんちょうさん』海洋冒険のロングセラー

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船乗りになりたい小さなチムの大冒険!

海賊も人魚も白鯨も出てこないけれど、本物の海の冒険がこの絵本にはあります。

イギリス生まれの海洋冒険絵本の古典的名作、ドキドキわくわくハラハラが詰まってますよ。

 

 

 絵本の紹介

 海辺に住む小さなチムの夢は船乗りになる事。

両親に夢を笑われていたチムですが、船に乗る機会に乗じて、なんと密航します。

大人と一緒に一生懸命働き、憧れの船乗り達の一員として、充実した生活を送るチム。

しかし、大嵐に遭遇して、あわや海の藻屑に!?

 

 

チムの自立心の高さや行動力が素晴らしく、ガッツがすごい!

船に密航してしまうとか、子供が目論むプチ家出のレベルを超えてますよね。

密航者にお怒りの船長達にこってり絞られて涙する事はあっても、自分の食い扶持を稼ぐべく、出来る事を精一杯やろうと働くチム。

だって、船にはいつもチムを守ってくれている両親はいません。

とにかく、自分でやるしかない……!

チムのひたむきに頑張る姿には、船乗り達じゃなくても絆されます。

自分でなんでもやってみたいし、背伸びをしてみたい年頃の子供にとって、大人と混じって働くチムは憧れなんじゃないでしょうか。

 

 

 

 

そして、船長がかっこいいんですよ!

白いひげに鋭い目つき、常に船長帽をかぶり、ジャケットかコートを着用するという、いかにもイギリス人らしい海の男。

懸命に働くチムをしごきながらも、船の一員、一人の人間として認める眼差し。

嵐にも毅然と立ち向かい、自分の船を最後まで守ろうとするプロ意識。

そして、秀逸なのは、船に取り残されたチムへかけるハードボイルドなセリフです。

 

「やあ、ぼうず、こっちへこい。なくんじゃない。いさましくしろよ。わしたちは、うみのもくずときえるんじゃ。なみだなんかはやくにたたんぞ。」

 (引用元:福音館書店 エドワード・アーディゾーニ著「チムとゆうかんなせんちょうさん」1963年出版)

 

か、かっこいい~~~、これは惚れるっっ!

命の瀬戸際にあって、冷静に苦境へ立ち向かう船長のこの言葉。

そうですよねっ、命の危険が差し迫った状況に涙など不要!!

かくも厳しくも頼もしい漢の背中、しびれますね!!!

自分、船長とならば、どこまでも一緒にお供します!と敬礼したくなります。

日本の絵本にこんなハードボイルドなセリフを吐くキャラクターなんて、いたかしら?

この二人のキャラクター性、特に船長の描写には、この絵本が生まれたイギリスの、日本とは違うお国柄がよーく表れてます。

 

 

他の登場人物も、セリフや出番は少ないのに、妙に生活感というか、リアリティがあります。

表情や服装、身振り手振りの細やかな描写にそれぞれの人柄が滲み、チムとの人間関係がどんなものなのか、想像が広がるんですよねー。

そもそも、この絵本はファンタジーの要素が出来るだけ取り除かれ、20世紀初頭と思われる実際的な海の生活をモデルにして描かれています。

いかつい船乗りの筋肉で盛り上がった縞々シャツや、タンクトップ姿のコックのタトゥーを掘った太い腕、ニ等運転士の本を片手にくつろぐインテリぶり……。

通行人の服装や室内の調度品などにも、それぞれの生活ぶりが見て取れるんですよ。

こういう細かいリアルの積み重ねがあってこそ、幼いチムが密航するという荒唐無稽な話が逆にすっと溶け込み、読む子供達が違和感なく、冒険に出られる仕組み……うまいですね~。

80年以上愛される絵本なだけあります。

 

 

この絵本、元々は大変古いお話です。

1935年頃に、作者のアーディゾーニさんが自分の5歳になる息子へ贈ったお話なんですって。

ああ、なるほど、愛する小さな息子の為に描いたからこそ、チムの気持ちへ丁寧に寄り添った文章になっているのかもしれませんね。

それをアーディゾーニさんご本人が1955年に描き直し、日本での初版は1963年。

もう80年以上も世界中の子供達を海の冒険に誘い続けているとは驚きです!

日本語版は、瀬田貞二さんの硬質で品格ある訳も一翼を担っていますよ。

 

チムの絵本は全11巻のシリーズへ成長し、全てが海を舞台としています。

残念ながら、日本では第一作に当たる「チムとゆうかんなせんちょうさん」以外は重版がされなくなってから久しく、入手が難しくなっていますが、古本屋さんや図書館にはありますので、そちらで手に取ってみてくださいね。

どのシリーズもチム、そしてチムの友人達が胸にきらりと光る勇気をもって、様々な冒険や事件を経験し、困難を乗り越えていく、素敵なお話です。

 

 

 我が家の読み聞かせ

私は船長のファンなので、長男が5歳になった頃から、この絵本を推しまくりました。

正直、ちびっ子兄弟は自分からこの絵本をを読み聞かせリクエストすることはないんですよ。

でも、図書館でチムのシリーズを見つけると、「あっ、チムの絵本だー、これを借りたい~」と言ってくるので、そこそこ好んではいるようです。

どうも、自分達が持ってこなくても、おかーさんが定期的に読んでくれるから……と思っている節がありますね。

まあ、実際にその通りなんですけど……。

 

チムの行動力あふれるストーリーは、息子達にとって、小さな子供が大人と対等に渡り合うスカッとする話の模様。

そして、自分達もチムのように船で働く事ができると主張しています。

「へっちゃらだよー!」と威勢は良いのですが、1人で船室のベッドに寝るのと、嵐に遭うのは怖いそうで……嵐は大人でも怖いけれど、1人で寝られないなら、それはダメじゃない??

2人にとっては、まだまだチムは憧れの人物のままのようです。

 

 

なお、私が船長のセリフを読む時は、いかにして海の男のカッコ良さを表現できるかを試行錯誤。

声のイメージはどの俳優さんに近づけようかなと考えながら、気難しい雰囲気で渋い声の出し方を工夫しているのですが、やはり元が女性の声では限界がありますね

ぜひ、ここは男性陣に「熟練の海の船乗り」的な渋い声で読み聞かせて頂きたいものです。

 
 

まとめ

作者のアーディゾーニさんが5歳の息子へ父として贈りたかった想いや願いが、この絵本へ詰まっているんでしょうね。

夢を夢だけに終わらせずに目標として定め、自力で逆境を乗り越えて、勇敢に生きる強さを秘めたチム。

でも、最後に家へ帰って、母の胸へ飛び込むチムの姿には、まだまだ幼い息子を手元で慈しんで過ごしていたい親の愛情が感じ取れます。

きっとチムが成長したら、素敵な大人になる事でしょう。

そんなチムと共に育ったアーディゾーニさんの息子さんは、どんな大人になったのかなあ~。

 

我が家の息子達にも、チムのようにしなやかな強さを身につけて、すくすく成長してほしいです。

でも、まだしばらくは私の「ぼうやたち」でいてほしいですけどねー。

 

 

【作品情報】

  • 題 名  チムとゆうかんなせんちょうさん
  • 作 者  エドワード・アーディゾーニ
  • 訳 者  瀬田貞二 
  • 出版社  福音館書店
  • 出版年  1963年
  • 税込価格 1,430円
  • ページ数 約46ページ
  • 我が家で主に読んでいた年齢 5~7歳(字が多めなので、4歳児には辛いかも)