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絵本『もこもこもこ』赤ちゃんが夢中になる不思議な現代アートの世界

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謎の物体が、もこもこもこ、ぱちん!

『もこもこもこ』に描かれるのは、赤ちゃんの為の現代芸術、奇妙奇天烈な絵本の世界。

大人にとってはシュール極まりなくても、小さな子供には強烈な引力を発揮し、読み聞かせにのめりこむ姿にはきっと驚かされる事でしょう。

一体この絵本には何が描かれているのか……読めば読むほど、どうして子供達がこんなにも惹きつけられるのか、謎は深まるばかりです。

谷川俊太郎さんの詩×本永定正さんの前衛美術=赤ちゃん絵本の名作、の図式をぜひご覧あれ~。

 

 

 

絵本の紹介

謎が謎を呼ぶシュールな世界観

地面から突如、何かがもこもこ盛り上がって、隣の何かもにょきにょき生えてきて、ぱくっと食べられて、ぷぅっと膨らんで……。

え、何を言ってるのかって?

私も何を言ってるのかよくわからなくなりそうですけど、これがこの絵本のあらすじですよ。

抽象的かつ幾何学的な絵に、文章は擬音のみ。

筋書きなどあってないが如し。

説明は一切なく、最後のオチではこの謎現象がエンドレスで繰り返されるであろう事を示唆して終わります。

 

大人から見ると、何が起こっているのか、何が面白いのか、さっぱりわからず、シュールにすら感じる絵本。

でも、なぜか子供、特に2~3歳の幼児はすごい勢いで食いつくんですよねー。

その様子は、ザ・子供ホイホイですよ。

とにかく、読んだ時の子供の集中ぶりがすごいんです!

そして、この絵本で子供は大笑い。

多分、ほとんどの大人は笑えないですよ、むしろそんなに笑うポイントある??ってなります。

でも、子供はひっくり返ったり飛び上がったりしながら、キャアキャア笑います。

このシンプル過ぎる謎現象に、そこまでアクションを取るほど、面白いと感じているその感覚の柔軟さが衝撃的!

大人になると童心を失う、とはよく言われる話ですが、確かにその通りかも……今の私には、この絵本で転げまわるほど笑う事はできません。

子供の頃の感性を失うまい、とは思っていても、真の意味で持ち続ける事はできないのだと、笑う息子達の姿を見ると思い知りますね。

この絵本が笑いのツボに入るのは、子供、特に赤ちゃんに近い幼児である証かもしれません。

 

 

保育士の友人も「この絵本は保育園で大人気、小さな子が静かになって集中するんだよ」と太鼓判を押していました。

実際、私も長男を保育園に通わせていた頃に、保育士さんがこの絵本を読み聞かせている場面へ何度も遭遇しましたが、ギャーギャー騒いでいた15人近い2歳児達が急に集中する姿に驚かされたものです。

時々、こういう赤ちゃんホイホイ的な絵本があるんですよねー。

何が彼らをそこまで引き付ける魅力なのか、不思議です。

低年齢の幼児の目を惹く色・形・音・動きを取り揃えているから?

極限まで無駄を削り、注視させる仕組みを構築しているから?

うーん、それでもここまで子供に集中させるのはどうやってなのか……?

擬音に秘められた日本語表現の豊かさ・純粋な音の面白さをストレートに楽しめるのが、言葉を学ぶ途上にある子供にとっては面白いのかもしれませんね。

作者であり谷川俊太郎さんと本永定正さんが、どうやって「もこもこもこ」を生み出したのか、そのプロセスをぜひ詳しく知りたいものです。

 

 

出版当時は評価が二分!

谷川俊太郎さんは今も第一線で活躍する詩人、本永定正さんは前衛美術を得意とした現代美術家。

1977年の「もこもこもこ」の出版は、当時の日本の絵本界に新風を吹き込み、賛否両論を巻き起こしました。

昔の絵本というのは、「清く正しく美しく」をモットーとするわかりやすい作品が主流。

あるべき正しい子供像が求められ、赤ちゃんが読めるような絵本も今から見れば考えられないほど少なかったんですよね。

なにしろ、日本初の赤ちゃん絵本「いないいないばあ」の出版が1967年ですからねえ。

ネットもなく、情報のスピードや鮮度が今と異なる当時の状況を考えれば、たった10年後に、「文章が存在しない擬音」と「抽象画というアート」の組み合わせの絵本がでるなんて、相当に異質だったんじゃないでしょうか。

実際、本永定正さんの元には、彼の手掛ける抽象画の絵本に対する批判が寄せられていたそうです。

でも、出版から40年以上経った今、時間がこの絵本に対する答えを出してくれましたね。

「もこもこもこ」は今、幼児向け絵本の定番ロングセラーとして愛されていて、我が家の息子達も大好きな絵本です。

 

本永定正さんは「もこもこもこ」以外にも、多くの幼児向け絵本を世に送り出しています。

どの絵本も、子どもが初めてのアートに触れる良い機会になるので、一読の価値ありですよ。

 

 

 

我が家の読み聞かせ

我が家のちびっ子兄弟、やはり2~3歳の頃が特にヒットしました。

何回読んでも、ページをめくるたびに「何が起こるのかな!?」と言わんばかりに目をキラキラ。

満面の笑みを浮かべて私の顔を見ては、また絵本に集中。

今でも、5歳次男は時々読み聞かせリクエストに持ってきて、くすくす笑ってます。

でも、7歳長男の方は、以前あんなにケタケタ笑っていたのに、最近ではさすがに大口をあけて笑わなくなってきました。

ちょっとはクスッとするんですけどね……。

長男の成長を感じる一方で、「もう完全に幼児から脱したんだな……」と思うと、嬉しい反面、少し寂しい~~~。

 

 

私はこの絵本を身内から頂きましてね、最初は地味な絵本だなと思ってたんですよ。

どうやって読み上げればいいのかも試行錯誤で、ちょっと難しいなあ……と悩む事も。

でも、読み聞かせた時の息子達の反応は、上記の通りの好反応。

悩んでいた読み上げ方も、自分が素直に不思議な一連の現象を楽しんで、それを擬音に込めれば良いんだと気づいてからは、読むのがとっても楽しくなりました。

見るもの聞くもの全てが「新しい驚き」で満ちている乳幼児にとっては、「おもしろい」と思うものが大人とは違うんですね。

大人はそれまでの人生経験でその感覚が擦り切れ気味……でも、育児を通して、そして読み聞かせを通して、子供の頃の感覚を思い出させてもらえるのは、とってもエキサイティング!

この絵本は私にそれを気づかせてくれました。

今では、自信を持って、オススメの一冊だと言えます。
 

 

まとめ

とりあえず、騙されたと思って、この絵本を手に取ってみてください。

最初の出会いは「なになに、なんなの、この絵本は??」と混乱するかもしれませんが、繰り返し読み聞かせていく内に、じわじわとこの奇妙な世界にハマるはず。

擬音だけでも成立してしまう日本語の面白さ、単純な色や形の羅列には留まらない現代アートの楽しさを小さな子供だけで独占するなんて、もったいない!

ぜひ、一緒に読む大人の皆さまにも、「もこもこもこ」の魅力を堪能してくださいね。

 

 

作品情報

  • 題 名  もこもこもこ
  • 作 者  谷川俊太郎(文)・本永定正(絵)
  • 出版社  文研出版
  • 出版年  1977年
  • 税込価格 1,430円
  • ページ数 30ページ
  • 我が家で主に読んでいた年齢 1~3歳(低年齢の幼児には絶大な人気)