絵本むすび

ちびっ子兄弟へ贈る絵本・児童書の読み聞かせブログ

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絵本『おだんごぱん』森の動物達も巻き込む逃走劇の結末は?

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半世紀前から愛されるパン絵本の定番、「おだんごぱん」!

美しい日本語と美しい挿絵が、ホッカホカおだんごぱんの魅力を引き立てます。

ぜひご一緒に、ころころ転がるおだんごぱんを追いかけてはみませんか?

 

 

絵本の紹介

おじいさんのリクエストで、おばあさんがおだんごぱんを焼きました。

焼き立て熱々、窓辺で冷やしてから食べましょう……でも、予想外の事件発生。

おだんごぱんがころころころころ転がって、家の外へ出ていっちゃった!

さあ、おだんごぱんの華麗なる逃走劇が始まるよ~。

 

 

 

焼いたパンやクッキーが逃げてしまう絵本、結構見かけますよね。

ジンジャークッキーだったり、しょうがパンぼうやだったり、大抵人型に型抜きされている事が多いんですけど、この絵本ではただの丸いパンが主人公。

擬人化が最低限なのが特徴的。

といっても、表情豊かな顔がついていますし、このパンがなかなかイイ性格してるんですよ。

自分を食べようとするウサギや狼を相手にしても、臆することなく、「おまえなんかに食べられるもんかーい!」と言わんばかりの小馬鹿にした態度で煽りながら、オリジナルソングを歌っては逃げ、歌っては逃げ……自己防衛の為とは言え、性格悪っ!

いや、私はこの性格の悪さ、嫌いじゃないですけどね。

 

そして、丸パンだから転がりやすいんでしょう、足場の悪いはずの森の中でも、逃げ足が速いんです。

自分よりずっと大きくて強いはずの存在でも、巧みにあしらって逃げてみせる姿は小憎らしいくらいにあっぱれ!

小さい弱い者が大きい強い者を翻弄するというのは、子供にとって、大人と自分の関係を投影して、殊更に愉快かもしれません。

さて、この小生意気なおだんごぱんを誰がどうやってペロッといくのか、知恵比べ。

おだんごぱんの上を行く巧みな話芸を披露するのは誰なのか、その口八丁ぶりはぜひ読んで確かめて頂きたいですね。

 

 

 

 

えー、ストーリーはともかくとして、この絵本の第一印象、それは「地味」じゃないでしょうか。

茶色メインの淡い色調や素朴極まりない絵は一見地味、すごーく地味。

華やかさや迫力とは無縁なせいか、絵本屋さんで見ても、スルーされがちかもしれません。

でも、この絵本の主人公は、アンパンマンでもなく、ピーター・パンでもなく、ただの丸いパンなんですよ。

となると、パンの焼き色は基本茶色なんです、地味な色なんですよ。

その主人公である茶色のパンより、他の登場人物をカッコよく目立たせる訳にはいかないじゃありませんか。

 

さて、そんな地味な姿ながら、ころころ逃げ回って歌ってみせるエンターテイナーでもある「普通の丸パン」の魅力をどうやって伝えていくか……それを実現してみせたのが、捏ねたてのパン生地の如き柔らかな輪郭の線、そして、主人公たる焼きたておだんごぱんを引き立てる優しい淡く色彩です。

ただ地味なのではなく、ごく普通のおだんごぱんを主人公とするお話をより魅力的に見せる為のアイデア。

茶色の色合いだって、よく見れば、濃淡複雑にぼかされた美しい色彩で表現されています。

 

改めて観察すると、そこかしこに、洋画家である脇田和さんがおだんごぱんを生き生きと描く為に凝らした創意工夫が散りばめられているんですよね。

絵本の絵はどうしても描かれた時代の流行の影響を受けがちですが、このおだんごぱんの絵は芸術性が高いせいか、50年前も、今も、そして50年後も、印象が変わらない普遍性がある気がします。

なお、表紙のタイトル文字の配色にもご注目!

色調は抑えつつも、文字を色違いにする事で、絵本らしい可愛らしさを演出してありますよ、遊び心が光りますねー。

 

 

瀬田貞二さんが綴る文体の折り目正しさと骨太さ、ロシア民話を豊かな日本語表現の駆使により日本の絵本に落とし込む、その腕前にも惚れ惚れします。

私が子供の頃から特に気に入っているのは、おだんごぱんの歌。

 

ぼくは、てんかの おだんごぱん。

ぼくは、こなばこ ごしごし かいて、あつめて とって、

それに、クリーム たっぷり まぜて、バターで やいて、

それから、まどで ひやされた。

(引用元:福音館書店 瀬田貞二・文 脇田和・絵「おだんごぱん」1966年出版)

 

客観的に見れば、まともにパンを焼く材料にも事欠く老夫婦が、家の粉入れの箱にこびりついた粉をこそげ取るようにして集め、そのなけなしの粉をクリームで練って、バターを塗って焼いただけの素朴なパン……うーん、あんまり美味しそうに思えないんですけど……。

でも、このおだんごぱんの歌を聴けば、「こなばこをごしごしかく」のが、なんだかとっても特別で素敵な事、ワクワクする響きに聞こえてきます。

なんたって、普通に粉を手に入れたんじゃありませんよ、わざわざ「こなばこをごしごしかいて」手に入れた特別な粉!

その特別な粉をたっぷり、更にたっぷりのクリーム、そしてバター!

美味しいパンにこれ以上必要なものはある?、と言わんばかりの、正々堂々たる歌いっぷり。

この歌を聴いている内に、あら不思議、世界で一番美味しいパンに聞こえてくるんですよねー。

訳ってすごい、訳って面白い!

おだんごぱんの歌の部分、最初は文のリズムが少々掴みにくいかもしれませんが、ぜひ工夫して歌ってみてください、段々癖になりますよ。

 

 

我が家の読み聞かせ

我が家のちびっ子兄弟が大好きなおだんごぱん。

食べられるものか!とばかりに、コロコロ逃走してみせるおだんごぱんの歌を私の作った適当メロディで大合唱。

キツネにパクッとされる場面になったら、息子2人のほっぺをパクッと食べるフリ。

もう読むと大はしゃぎになる絵本です。

私も息子達も楽しい、これぞ読み聞かせの醍醐味、WIN-WINの関係。

可愛いほっぺのおだんごぱん、いつまで食べられるかなー。

食いしん坊には、この絵本は何回読んでも飽きないんじゃないでしょうか。

実際、食い意地の張った子供の頃の私はおだんごぱんが大好きでしたし、すぐに食べ物で釣られる食いしん坊の息子達も読み飽きないんですって。


 

ふと思ったんですけど、日本でも作った食べ物が逃げ出す民話って何かありましたっけ?

この「おだんごぱん」はロシア民話ですし、その他のお話もパンやクッキーですから、元はヨーロッパ。

もし日本の場合だったら、餅や団子になるのかな?

餡子だっぷりの大福がころころ逃げ出すとか?

うーん、日本でそんな民話あったかな……餅やその他が擬人化されるような話が思い出せません。

どうしてパンは擬人化されているのに、餅は擬人化されてないのか、気になります。

私が知らないだけかなあ~???

 

 

まとめ

 表紙では、おだんごぱんを皆が囲んでジーッと物欲しげに見ているんですけど、当の本人(本パン?)の表情は何とも言えない顔をしているように見えるんですよね。

笑っている?警戒している?戸惑っている?何か企んでる……??

表紙を飾る絵本の主人公にこんな心の内を読みにくい表情をさせるとは、そのチョイスが面白いですね。

子供向けとは言え、決して単純には終わらせない、シンプルな話の中に美しさと複雑さを隠し持つ、おだんごぱん。

 ああ、おだんごぱんはどんな味がするのでしょうか、私も食べてみたいです。

 

 

【作品情報】

  • 題 名  おだんごぱん
  • 作 者  瀬田貞二(文)・脇田和(絵)
  • 出版社  福音館書店
  • 出版年  1966年
  • 税込価格 1,320円
  • ページ数 約23ページ
  • 我が家で主に読んでいた年齢 3~5歳(パン好きにオススメ)