ピッツァを愛する食いしん坊は必見の絵本、アメリカ生まれの『ピッツァぼうや』。
表紙の裏表いっぱいに描かれた、主人公ピート満面の笑顔が素敵でしょう?
ピートをこんな楽しそうな笑顔にしたのは、お父さんが考えついたごっこ遊び。
親子の愛情たっぷりなコミュニケーションは子供を笑顔にするんですね~。
この絵本を読めば、きっとみんな同じように幸せいっぱい笑顔になれますっ!
簡単なあらすじ
雨が降ったせいで、外へ友達と遊びに行けなくなったピートはご機嫌斜め。
不機嫌なピートを見たお父さん、ピートを慰めようと「なにかいい手はないかな」と考えます。
どうしようかな……そうだ、ピートをピッツァにしてみよう!!
さあ、ピートをテーブルに運んで、楽しいピッツァ作りの始まり始まり~。
絵本の紹介
親子のコミュニケーションを絵本化
この絵本の何が面白いって、タイトルが「ピッツァぼうや」なのに、肝心の本物のピッツァは一切出てこない事!
さぞ美味しいピッツァが出てくるグルメ絵本だろうと期待して購入したのに、まさかのタイトル詐欺ですよ。
でも、まーったくピッツァそのものが出てこないのに、焼き立て熱々ピッツァの事がこんなにも脳裏に思い浮かぶ楽しい絵本なんて、他にちょっとないんじゃないでしょうか。
お子さんのいらっしゃるご家庭にて、小さな子供を食べ物に例える事ってありませんか?
我が家の場合、息子達が赤ちゃんの頃から、「おまんじゅうちゃん」「あんぱんちゃん」「マシュマロちゃん」などと呼んで、「おや、こんな美味しそうなおまんじゅうは食べちゃおう!」と、ほっぺやお腹を食べるごっこ遊びをしています。
赤ちゃんではなくなった7歳長男も5歳次男も、未だに満面の笑顔で「もう1回!」とねだる鉄板の遊び。
そんな親子のたわいない親密なコミュニケーションを絵本にしたのが「ピッツァぼうや」です。
ピートのお父さんがムスッとした顔の息子を笑顔にしようと考え付いたのが、ピートをピッツァに見立てて、遊ぶ事。
ピッツァ生地になったピートへ紙切れのチーズを乗せたり、ソファのオーブンで焼いてみたり、食べる為にカットしてみようとしたり、食べられまいと逃げ出したピッツァを追いかけたり……。
傍らには、それを優しい眼差しで微笑んで見守るお母さん。
お父さんとの遊びの中で、ご機嫌斜めだったピートがどうなったかは、表紙の笑顔を見れば一目瞭然です。
読んでいて思わずフフッと笑いがこぼれそうになる、ありふれた親子の姿。
国や言葉、文化が違っても、親子の愛情に変わりはないんですよね。
国境も人種も超えて、絵本が教えてくれる遠い国の家族の団欒には、ほっこりと温かい気持ちになります。
ちなみに、目の前にない概念を連想・思考できるのは、動物の中でも人間独自の能力なんだとか(一部類人猿も多少は獲得しているという説もありますけどネ)。
この絵本はまさに「本物のピッツァ」ではなく、「ピッツァという概念」を主軸にしているので、この面白さを理解できるのは、人間である証拠!
生まれたばかりは動物に近い存在の赤ちゃんが、抽象的な思考能力が発達して、「人間」へと成長してきた、とはっきりする3歳以降に読むのがぜひおすすめです。
要するに、この絵本の面白さを満喫するならば、ごっこ遊びを明確に理解した年頃に読んでくださいね。
作者、最晩年の作品
この絵本、作者のウィリアム・スタイグさんが90歳の御年で描いてるんですよ。
スタイグさんは、アニメ映画「シュレック」の原作者としても有名な方です。
- 価格: 1100 円
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90歳でも現役だったとはすごい話ですよね~。
『ピッツァぼうや』に伺える発想の柔らかささ、茶目っ気のある遊び心、親子の幸せなコミュニケーションをおおらかに描く筆致。
なにより、こーんな温かい絵本を出版しようとする姿勢が素晴らしいっ。
何の気負いもなく、筆を走らせたような、ゆるやかな空気感。
山も谷もないけれど、何度読んでも飽きない、皆に愛される温かくてシンプルなピッツァみたいな絵本ですね。
私もこんな感性の若い90歳になってみたいなー。
我が家の読み聞かせ
我が家の息子達はピッツァぼうやごっこをするのが大好き!
夜寝る前にこの絵本を読んだら、2人をピッツァにするのはお約束です。
お腹や頭にトマトやチーズを乗せるふりをして、お布団というオーブンへ運んで、掛布団というオーブンの蓋を閉めて、さあ焼きましょう~、とやると大はしゃぎ。
むしろ、はしゃぎ過ぎてその後なかなか寝付かないので、ちょっと困るくらいですが、親子でピッツァぼうやごっこをするのは楽しいですよ~。
このごっこ遊びは、年齢が3歳でも5歳でも7歳でも、大喜び。
ぜひ、読み聞かせとセットで遊んでみてくださいね。
なお、この絵本を読むと食欲がわくのか、「今日はピッツァをたべたいよー」とせがまれる率高し。
食費の節約をしたいこちらとしては「また今度ねー」と躱すのに必死です。
お腹が空いている時間帯は避けて、満腹のタイミングで読むのをお勧めします。
あ、ピッツァを食べた日はもちろん、読み聞かせは「ピッツァぼうや」で決まり!
まとめ
惜しむらくはこんなに素敵な絵本なのに、今は新品を入手しづらい事。
なぜなんでしょう、印象がちょっと地味なのかなあ~。
絵本って相当のロングセラーや人気作でないと、すぐに絶版になったり、販売終了になってしまうんですよね。
出版社も商売ですから、利益を出さないといけませんし、少子化の影響もある狭い業界ですから、仕方ないとは思うんですけど……もったいない!
でも、古本屋や図書館では結構見かけますので、ぜひ手に取ってみてください。
読んだら必ず親子で真似をしたくなるユーモアたっぷりの1冊。
もう1回ならぬ、もう1枚、とお代わりしたくなること間違いなしですよ。
作品情報
- 題 名 ピッツァぼうや
- 作 者 ウィリアム・スタイグ
- 訳 者 木坂涼
- 出版社 らんか社
- 出版年 2000年
- 税込価格 1,500円
- ページ数 32ページ
- 我が家で主に読んでいた年齢 4~5歳(ピッツァを食べた経験があれば面白さ倍増!)