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絵本『3びきのくま』ロシアの大文豪トルストイが贈る名作絵本

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ヨーロッパに古くから伝わる、女の子が3匹のくまの家に迷い込む童話。

 様々なアレンジを加えられつつも広く愛されているお話ですから、1度は耳にした事があるかもしれませんね。

こちらはなんと、ロシアを代表する文豪トルストイがロシア民話として練り直したバージョン。

日本でもこの絵本の根強いファンは多く、半世紀以上にも渡って、定番的存在として愛されています。

しかし、ただ、可愛らしいだけの絵本ではない気が……??

テディベアみたいな可愛いくまさんなんて幻想だと教えてくれる『3びきのくま』、どうぞ読んでみて下さいね。

 

 

 

簡単なあらすじ

森で迷子になった女の子、3びきのくまの家とは知らずに見つけた家へ留守中に上がり込み、勝手にくま達の椅子に座って、並んだスプーンを使ってスープを飲んで、しまいにはベッドで眠ってしまいます。

帰ってきた3びきのくま、何者かが自宅へ無断侵入した事に気付いてプリプリ怒る!

グースカ寝ている女の子の運命やいかに!?

 

絵本の紹介 

熊の野性味が隠しきれない……?

こちらはロシアで描かれた絵本ですが、話自体は英語圏で古くから伝わる有名な民話。

1837年にイギリス童話「ゴルディロックスと3匹のくま」として出版されていますが、元は更に古い話らしく、スコットランドが発祥とも言われています。

でも、本当の所は真偽不明……何がどう伝わって、この絵本ではロシア民話として描かれたのかはわかりませんが、あちらの国々は地続きですから、遠く伝播していったり、似たような話がゴロゴロしていても、不思議ではないのかな?

 

 

 

 

大中小揃ったくまの椅子やスープ皿などを巡って、くま3匹分の繰り返されるフレーズが子供心に楽しくて、私も夢見る小さな頃は可愛いほっこり系イラストの3びきのくまを読んで、こんなくまさん達の家に遊びに行きたいなー、なんて思ってました。

でも、数ある3びきのくま絵本の中でも、こちらは一味違います。

表紙を一見するだけでもわかりますが、野生の熊の無表情さがありますね。

3びきのくまのやりとり自体はユーモラスなんですけど、どこか緊迫感がにじみます。

 

野生動物って目が無表情なんですよねー。

彼らには、人間みたいに愛だの恋だの自分探しだの浮かれた事をチマチマ考える余裕なんかありません。

いや、繁殖期は寧ろそちらの本能で頭一杯にはなりますけどね?

基本的には、弱肉強食の世界に生身で勝負して生きるのが精一杯、それが野生。

 で、ひたすら虚無というか、「オレ、オマエ、喰ウ」みたいな剥き出しの欲望だけが浮かんでる、そういうガチのヒグマの目をしてる3びきのくま。

表紙も可愛い服を着ているのに、目は威圧感がすごい……え、そう感じるのは私だけですか?

 

 

 

 

この絵を描いたワスネツォフさんにそんな気があったかどうかは定かではありませんが、この3びきのくまには野生のすごみを感じます。

1962年初版ですので、もしかしたら、当時の絵としては、この3びきのくまはファンシーな方だった可能性はありますけど……。

でも、私にはリアルなくまの存在が透けて見えるんですよねー。

いやはや、無銭飲食及び無断宿泊、やりたい放題をかました主人公の女の子、その野生の怒ったヒグマ(推定時速50km以上)から、足場の悪い森の中を走って逃げ切るなんて、人間離れした俊足と回避能力の持ち主ですよ。

「くまさん、かわいい~」なんてお花畑思考&運動音痴な子供の私だったら、間違いなくザクッとヤられてます。

 


ちなみに、この絵本が描かれたロシアでは、熊は国を象徴する動物だそうです。

可愛らしいペットやマスコットキャラクターとして人々から愛される一面。

帝国時代から、強さと偉大さの象徴として畏怖され、権力を示す存在だった一面。

この絵本の絵柄は、そのどちらの流れも汲んでいるのかな、なーんて想像も広がるなあ。 

 

作者は文豪トルストイ!!

個人的には、文作者のトルストイさんが、「戦争と平和」を執筆したロシアの大文豪トルストイ本人、と言う事にめちゃくちゃ驚愕です。

名字が同じだけの違うトルストイさんだと思ってました……。

そういえば、大文豪トルストイさん、古くからの民話を練り直し、その思想を大衆へわかりやすく落とし込んで、文学作品として世に送り出す事をしてらっしゃいましたね。

 

 

 「イワンのばか」はその代表作ですが、まさか手元の絵本にその一部があろうとは思いもしませんでした。

これは日本語に訳されていますが、ロシア語原本はやはり韻の踏み方など文学的表現が違うのかな……ロシアの子供達がどんな言語的体感を持って読んでいるのか、体験してみたいものです。

 

 

我が家の読み聞かせ

くまのセリフはその体の大きさに合わせて、声の大きさを変えて読むのがお約束。

父熊はドスを聞かせ、母熊はソプラノボイス、子熊はアニメ声をイメージすると、我が家のちびっ子兄弟は喜びます。

父熊を長男、母熊を私、子熊を次男と、セリフを分担すれば、張り切って一緒に読み上げてくれるので、参加型としても楽しめますよ。

 

 

くまの名前はロシア語の名前なので、慣れない内は舌を噛みそうになるくらい長いんです。

長男に読み聞かせ始めた当初の3歳頃は、名前をいちいち読んでいると飽きてしまうようなので、省略して読み聞かせてました。

フルネームで読み上げても話に飽きずに集中できるようになったのは、我が家の場合、兄弟2人とも5歳頃でしたね。

 

まとめ

さて、好き勝手書きまくりましたが、この3びきのくまは、一般的には女子受けが良いロングセラー。

日本の絵本で、この絵本がカメオ出演している作品をちょこちょこ見かけるくらい、人気があります。

花やキノコなどのイラストもロシア風で可愛らしいので、世の夢見るお嬢様方にもおすすめですよ。

私のように野性の恐怖を感じる方も感じない方も、ぜひ手に取ってご一読くださいね。

 

 

作品情報

  • 題 名  3びきのくま
  • 作 者  レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ
  • 作 者  ユーリー・ワスネツォフ
  • 訳 者  小笠原豊樹
  • 出版社  福音館書店
  • 出版年  1962年
  • 税込価格 1,210円
  • ページ数 17ページ
  • 我が家で主に読んでいた年齢 3~6歳(長男、小学生になった途端に飽きる)