絵本むすび

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絵本『きんぎょが にげた』絵の中に隠れた金魚を追いかけろ!

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のほほ~んとした表情の愛くるしいきんぎょの絵探し絵本。

このきんぎょ、日本の絵本界ではトップクラスの人気者です。

なにしろ、絵本の売上冊数はダブルミリオンをとっくに超えて、トリプルミリオン目前。

グッズ展開に至っては、ファッション・ベビー用品・文房具・雑貨など、とりあえず子供が関わるものは軒並み網羅し、どれもこれもユーモアあふれる可愛さ。

初版から40年以上経つというのに、その人気は年々高まるばかり!

赤ちゃん絵本としての絶大な人気の秘密は一体何なのか……きんぎょの謎を一緒に追いかけてみませんか?

 

 

 

簡単なあらすじ

きんぎょが逃げた、どこへ逃げた?

オモチャ部屋?植木鉢?台所?

きんぎょが空中を泳いで逃げ回り、かくれんぼしているのを探して探して……最後にきんぎょが逃げこんだ先はどーこだ?

 

絵本の紹介

きんぎょ探しを楽しもう

金魚鉢から逃げ出したきんぎょ、家の中を自由自在に逃げ隠れ~~。

魚は空を飛ばない、なんて無粋なセリフは言いっこなし!

大人は「魚は空を飛べない」という固定観念に縛られていますけれど、世界が「初めて」で溢れている低年齢の幼児にそんな縛りはありません。

発想の自由こそが、絵本を面白くする大切なエッセンス。

飛行機が空を飛ぶなら、魚が空を飛んでも、おかしくないのですっ。

 

きんぎょが逃げて隠れての繰り返し、には幼児の好きな絵探しの要素がたっぷり。

こんな目立つ真っピンクのきんぎょでは室内のどこに隠れてもすぐにわかるでしょ、と思いきや、これが意外とわからないんですよー。

なにしろ、きんぎょが隠れている絵は、どれも五味太郎さん独自の色彩センスを遺憾なく発揮してあり、とってもカラフル、目に鮮やか!

五味太郎さんの手にかかれば、私達が普段目にしている日常の一コマも、こんなに美しい色彩に溢れている世界に早変わりするのかと、感嘆します。

初見では、大人でもきんぎょがどこにいるのか一瞬分からないかも?

 

 

 

 

隠れ場所のアイデアも意外なものばかりで楽しいんです。

花になりきったきんぎょ、キャンディの瓶の中に逃げ込んだきんぎょ、イチゴに成りすまして食べられそうになるきんぎょ……。

時には可愛らしく、時にはユーモアがあり、時にはきんぎょが危機一髪!

テレビ画面に澄まして鎮座するきんぎょの姿には、なかなか策士だなあ、と感心するかもしれません。

子供と読みながら「あー、こんなところに隠れてる!」と探すのは面白い時間ですよ。

常識を軽やかに躱して、部屋の中を泳ぎ回るきんぎょの姿に、子供ならではの柔軟な思考を見るようです。

 

何回も読み聞かせていれば、どんな小さな子供も金魚の隠れ場所を自然と覚えてしまいますが、絵探しの面白さはそんな事では目減りしません。

以前、過去記事でも触れましたが、幼児は同じ事を何回も繰り返すのが大好きですからね。

 

ehonmusubi.hatenablog.jp

 

そもそも、絵探しは、絵を探す楽しみの次に、人に教える楽しみが待っています!

家庭での読み聞かせにて、家族に向かって、きんぎょの隠れ場所を真っ先に指差して教える子供の顔は、これ以上ないくらい得意げな笑顔のはず。

そりゃそうですよね~、自分はもう答えを知っているという優越感、いつもは大人から教えられてばかりの立場である子供の自分が、今度は逆に大人へ教えてあげる立場になる、という逆転現象の愉快さを味わえるんですから、嬉しくないはずがありません。

この絵本を特に読む2~3歳は、何でも自分でやってみたい気持ちが特に強い年頃ですから、教える楽しみを味わえる『きんぎょが にげた』は、何回読んでも飽きないでしょう。

 

最後はきんぎょが逃げた理由も間接的に明かされ、沢山の友達ができたきんぎょの姿にホッコリ。

きんぎょがどうして逃げていたのか……きんぎょの気持ちを一緒に想像すれば、ストーリーを理解し、登場人物の心情を読み取る練習にもなりますね。

きんぎょのその後を想像するのも楽しそうでしょ?

きんぎょが飛んで逃げたんですもの、仲間の金魚達も「飛べないなんて誰が言った?」とばかりに、今度は集団で逃げたりして……!?

きんぎょのその後、子供と一緒に考えてみるのも、オススメの楽しみ方です。

 

 

五味太郎さんは凄いひと

五味太郎さんは、45年以上のキャリアの中で生み出してきた絵本は400冊とも450冊とも言われる現役の絵本作家です(2021年時点)。

すごい数ですよね……子供の心に寄り添い、共に空想の世界へ飛び込んでいく絵本をこんなにも沢山出版し続けるなんて、本人が絵本作りを心底楽しんでいなければできない事ではないでしょうか。

いや、絵本作家という職業上、仕事の一環と言えば、それまでかもしれません。

けれど、普通の仕事ですら長く続けるというのは大変なのに、絵本作りはゼロから子供の心に響く作品を創り出す仕事……とても、ビジネスだけで続けていけるものではないはず。

たゆまぬ創作意欲と子供に負けないくらいの心の柔軟性、アイデアを生み出し続ける発想力。

そして、何よりも絵本作りを楽しいと思う気持ちを持ち続けなければ、とてもそれだけの数は描けないと思うんです。

 

 

 

 

で、そのレジェンド的存在の五味太郎さんの代表作として知られるのが、『きんぎょが にげた』。

五味太郎さんの絵は、「あっ、五味さんだ!」とひと目でわかる、独特の柔らかく美しい色彩が特徴的ですが、きんぎょの鮮やかなピンクなんて、いかにも五味太郎さんらしい配色ですね。

また、無駄を削ぎ落した大胆なデフォルメをした造形に、笑いを誘うユーモアを利かせているのも、五味太郎さんならでは。

この絵本では、金魚が持つ要素を最低限にまでミニマム化し、つぶらな瞳・丸いフォルム・半開きの口をセットすれば、唯一無二のきんぎょが誕生です!

 

五味太郎さんの数ある絵本の中でも、きんぎょはピカイチの可愛らしさで、アイコン的存在としても非常に優秀。

40年以上前の絵本なのに、この絵は今描きましたと言われても何の違和感もない新しさがあるのは、色彩センスの素晴らしさとデフォルメの上手さゆえなんでしょうね。

これだけ要素を削ぎ落してシンプルに仕上げた主人公ならば、時代の流行り廃りで古びる要素が入り込む余地もありません。

表紙の絵なんて、額に入れてそのまま飾れるデザインの素敵さ……そりゃ、キャラクター商品として売り出してもイケるはずですよ、だって、問答無用にカワイイですもの!

ちなみに、絵本の最後、仲間の金魚が沢山いる場面では、金魚の造形をミニマム化してあるだけに、水槽の中を泳ぐ仲間達の中から、主人公のきんぎょだけをどう判別するのかと思ったら、目の描き方で判別……なるほど、シンプルながらも確実な方法ですよ、やっぱりすごい!

 

文章も言葉選びのセンスが絶妙。

私が「簡単なあらすじ」に書いたようなストーリーは、実際には文章でほとんど語られてはいません。

主人公のきんぎょの気持ちも、どうして逃げたのかも、一切文章での説明はなし!

「きんぎょがにげた」「どこへにげた」など必要最低限の言葉しか使われていないのです。

しかし、「目は口ほどに物を言う」ではありませんが、絵が語る、めちゃめちゃ語る……!

個人的には、ストーリーを言葉による理屈ではなく、絵による感覚で伝えるのが、五味太郎さんの特色だと感じます。

絵に描かれている事は、わざわざ文章に起こさない。

1から10まで言葉で説明するのではなく、読者である子供達へ想像の伸びしろ、物語の余白を残す。

絵本は絵から物語を読み取ればいいというブレない姿勢、その上で、絵に添える言葉を選び抜いている感じがします。

特に、『きんぎょが にげた』は赤ちゃん絵本ですから、語彙が少なくて感覚で絵本を読む乳幼児達には、この方法がしっくりくるんじゃないでしょうかねえ。

 

 

我が家の読み聞かせ

息子達も3歳頃まで読み聞かせリクエストしまくっていた、お気に入り絵本。

長男が3歳まで通っていた保育園でも、大人気で読み聞かせの定番でしたよ。

もし、皆様がご自宅では持っていなくても、お子さんが幼稚園や保育園に通っていれば、園生活の中で、恐らく高確率で目にする絵本のひとつではないかという印象を受けますね。

 

私がこの絵本を読む時は、あんまりテンションを上げ過ぎない方が合う気がするので、ゆったりしたスピードで読んでました。

絵の中に隠れたきんぎょを息子達に探してもらい、指差しできたら、

「よく見つけたね、どうやってわかったの?すごい!」

とヨイショしまくり、拍手喝采。

2人とも、それはもう張り切って、「きんぎょはここだよ!」と教えてくれましたよ。

「おかーさん、こんなこともわからないの~?」とそれはもうニヤニヤが止まらない顔で言われるたびに、「えっ、きんぎょがどこにいるか、わかるの?教えて教えてっ」と小芝居をして、得意絶頂になる息子達を見るのが、私も楽しくて……!

幼稚園年長になる頃には全く読まなくなってしまいましたが、この絵本を手に取るたびに、あの楽しかった時間を思い出して、幸せな気持ちになります。

 

 

まとめ

冒頭で問いかけたきんぎょの人気の秘密。

私が思いついたのは、発想の自由さ、ユーモアたっぷりのアイデア、絵探しの醍醐味、時代を超えて愛される絵の可愛らしさ、想像力を掻き立てるストーリーの工夫……。

他にも私が気づいていない秘密もあるのかも。

でも、こういう絵本を構成するエッセンスよりも何よりも、五味太郎さんの、子供達に向けて絵本に込めた「楽しんでほしい」という思いが、1番子供の心を惹きつける人気の秘訣なのかもしれないな……なんて、ふと思うのです。

 

いや、この絵本って絵探し要素はあるんですけれど、知育や道徳といった親の下心が入りやすい教育的要素は、あまり感じないんですよね。

きんぎょ探しを通して、子供達の心に込み上げてくる「可愛い」「面白い」「嬉しい」「楽しい」、そういう純粋な気持ちを楽しんでほしい、ただそれだけを五味太郎さんはきんぎょに込めたんじゃないかなー?

読む子供にも「絵本大好き」と思ってもらえたら嬉しいなあ……そういう思いがきんぎょを空に飛ばして、大人も子供も純粋に好きになれる人気者に育て上げたのではないか、と私は想像するのですが、皆様はいかがお考えですか?

 

 

作品情報

  • 題 名  きんぎょがにげた
  • 作 者  五味太郎
  • 出版社  福音館書店
  • 出版年  1982年
  • 税込価格 990円
  • ページ数 24ページ
  • 対象年齢 2歳から
  • 我が家で主に読んでいた年齢 0~3歳(特に2歳頃にフィーバー)