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絵本『よるくま』酒井駒子さんの人気作は寝かしつけにオススメ

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胸に白い月が光る真っ黒な小熊、よるくまが最高にキュート!

人気作家の酒井駒子さんが贈る、可愛いよるくまのお話は、子供にも大人にも人気です。

夜にだけ現れるよるくま、一体何をしにきたのかな?

 

 

 

簡単なあらすじ

夜寝る前のひととき、男の子がママに話すのは、昨夜出会ったよるくまの事。

よるくまは、とっても可愛い熊の子なんだよ。

ぼく、よるくまに頼まれて、いなくなってしまったよるくまのお母さんを一緒に探したんだ。

ねえ、ママ、よるくまのお母さんはどこに行ってしまったんだと思う?

 

 

絵本の紹介

絵本に凝らされた工夫

お話の主体が男の子とお母さんの寝る前の会話から、男の子が語るよるくまの話へ移り、ごく自然にお母さんへと返っていって、「おやすみ」と締め括られる流れの滑らかさが見事!

自然に男の子が微睡んでいき、最後に読み聞かせているこちらが静かに本を閉じる所までを一連の流れとして組み込んであって、現実と絵本の世界との一体感が素晴らしいです。

このスムーズさが影響するのか、読むと優しく穏やかな気持ちになれるので、寝かしつけの時間に読むのもぴったりですよ。

  

人物ごとにセリフのフォントの工夫がされているのも利いてますね。

お母さんのセリフが明朝体系、男の子のセリフがゴシック体系(フォントには詳しくないので、名称が間違っていたらすみません)。

説明文章がないセリフだけの絵本ですが、この工夫のおかげで、どれが誰のセリフかわかりやすく、声色を変えての読み聞かせもしやすいです。

最後の「おやすみ」がゴシック体系なのは、男の子がよるくまのお母さんが話していると思って夢うつつに聞いたセリフだからなのかな、と想像するのも楽しい~!

 

 

子供限定!空想のお友達

小さな子供にはイマジナリーフレンド、いわゆる「空想のお友達」がいる事がよくありますね。

程度はあれど、心の世界で一緒に遊んだり、おしゃべりしたり、喧嘩したり……。

子供の成長と共に記憶からも消えてしまいがちな儚い存在ではありますが、子供が想像の世界で自由に生きている象徴でもあります。

この絵本の男の子にとって、よるくまはその場限りの即興で語っているだけかもしれないし、何回も心の中で遊んでいるのかもしれない……いずれにせよ、男の子にとってのよるくまは、子供の時にだけ会える特別な存在。

子供が子供でいられる時間は長いようで、とても短く、あっという間に大人になってしまう……男の子がよるくまに会えるのも今だけと思うと、ついしんみりしてしまいます。

 

いやー、この絵本を読むと、私は息子達の姿を重ね合わせてしまうんですよねー。

男の子がよるくまと出掛けるように、息子達も自分達で考えた「お友達」の話をしてくれるのですが、もうちょっとでこの楽しい時間がなくなるのかと思うと、せつなーい!

男の子がよるくまを忘れても、息子達が「お友達」を忘れても、男の子のお母さんと自分だけはそれぞれの存在と過ごした時間のかけらを覚えておきましょうね、とついつい感傷的に……。

ついつい大人目線、親目線で書いてしまいましたけれど、同じように共感してくださる方もいらっしゃる、でしょうか?

 

 

酒井駒子さん、活動初期の魅力

酒井駒子さんは繊細な線の積み重ねと独特のかすれた色の塗り重ねによる、愛くるしさの中にもどこか憂いを含んだ幻想的な絵で人気がある絵本作家。

まるで美しい詩を綴るように描かれた絵は、ただ物や人を描くのではなく、複雑な心の動きを映しとっていて、思わず視線が吸い込まれます。

特に、温かな温度感の中にも憂愁を感じさせる酒井さんの絵と言えば、ふっくらほっぺのあどけない面差しとアンニュイな眼差しを併せ持つ女の子、辺りが真っ先に浮かんでくるんですよね~。

 

 

しかし、この「よるくま」は酒井さんのデビューから2作目に当たる作品で、現在の画風が確立される寸前に描かれた為、線の描き方がシンプルで、色の塗り方もかすれが少なく陰影が薄く、今ほど物憂げな雰囲気は感じられません。

好みは人それぞれですが、小さな子供はこの「よるくま」の絵の方がわかりやすくて好きなんじゃないかな……今の酒井さんの絵は大人受けはするものの、「憂い」を理解する幼児なんて、そうそう居ないでしょうし……。

 

けれど、ふわふわと夢の世界を揺蕩っているような感覚の可愛らしい絵にも、やはり酒井さんならではの独特な感情表現が見て取れます。

よるくまが泣いて全てが暗く塗りつぶされる場面には、世界が足元から崩れ落ちていくよう不安と喪失感。

 真っ暗な空をまっすぐに横切る白い流れ星には、胸の中へ切り込まれるような印象の強さ。

夜闇の中をよるくまのお母さんが駆け抜ける姿は光がキラキラこぼれるようで、明日という未来への希望に満ちています。

温もりのある愛らしいトーンの表現に滲む、硝子のような危うさと鮮烈さ……このどこかアンバランスな取り合わせが得も言われぬ魅力を醸し出していますね。

トーンとしては黒や青などの暗い色ばかりの絵本なのに、人肌のような優しい温もりを感じるのは、酒井さんならではと感じられます。

 

 

我が家の読み聞かせ

ワーキングマザーにとっては、よるくまのお母さんへ共感できる部分が結構あるのではないでしょうか。

私は長男2歳過ぎまでは共働き育児をしていたのですが、その頃はこの絵本を読んでいて胸に迫るものがありました。

働いている事自体は自分なりに考えて選択した事で、楽しんで仕事に取り組んではいましたが、子供への想いはまた別の話なんですよね。

 

保育園へ預ける時は、長男が泣かない日はないというくらい、本当に毎日泣いていたので、やはり寂しがらせているのかな、と胸の詰まるような、やりきれない思いをする事も頻繁にありました。

仕事もして家事もして育児もして、と自分の容量がいっぱいいっぱいになっている時ほど、息子の泣き声が堪えましてね……そんな時に、よるくまがお母さんを泣きながら呼ぶ場面の読み聞かせをすると、その姿が息子と重なってしまい、産後に涙腺の蛇口がゆるみまくりの私は思わずもらい泣きです。

 

でも、よるくまのお母さんは、ばりばり働いて、強く逞しく温かい母として、我が子のよるくまを包み込んでいるんですよね。

よるくまのお母さんが夜遅くまで働いて釣ったお魚でご飯を食べて、そのお魚を売ったお金でオモチャを買って、そして日々を暮らしている……よるくまの生活を全方面から支える為に、時には離れていないといけない時もある。

母としての精一杯を尽くしているよるくまのお母さんの姿を見ると、外で働いていようが働いていなかろうが、全てはよるくまの為、母親として頑張っている事には何の変りもないんだから大丈夫!と励まされる思いがしました。

絵本は子供だけでなく、大人の力にもなってくれるのだと、この時に改めて実感。

今でも、この絵本を読むと、あの頃の追いつめられていた自分が懐かしいのと同時に、母は強し、私もよるくまのお母さんと一緒に頑張ろうっ、と気持ち新たになりますね。


 

余談ですが、我が家のちびっ子兄弟、よるくまごっこを最近始めました。

7歳長男が男の子役、5歳次男がよるくま役。

2人で手を繋いで、家の敷地内をぐるぐるしながら「お母さんはどこにいったんだろうねー?」「ねー??」と探すふりをしています。

家の中でゴロゴロしている私を見つけた時は「こんなところでなにをしていたの、お母さん!」「こんな可愛いよるくまをなぜ置いていったの!」と2人にしがみつかれるまでが一連の流れ。

すみません、ただ惰眠を貪っていただけで、何にも働いてはいませんでした……はい、働き者のよるくまのお母さんを見習いたいと思います!

 

 

まとめ

男の子の少し甘えた小さな話し声、柔らかくてふかふかのお布団、そっと添えられる母の手のぬくもり、傍から離さないお気に入りのぬいぐるみ……とある母子の毎夜繰り返されているであろう、寝かしつけの時間。

絵本に描かれたそれは、ごくありふれた日常のひとときですが、寝かしつけなんてするのは、子供が小さな頃だけ。

親子だけでゆったりと過ごせる時間は、人生を通してみれば、ほんの僅かなんですよねー。

その、あっという間に過ぎゆく子供の時間を大事に過ごしたいならば、この「よるくま」を一緒にゆっくり読んで、時にはそのままウトウトするのも、思い出に残る過ごし方かもしれませんよ。

 

 

作品情報

  • 題 名  よるくま
  • 作 者  酒井駒子
  • 出版社  偕成社
  • 出版年  1999年
  • 税込価格 1,100円
  • ページ数 約31ページ
  • 我が家で主に読んでいた年齢 2~4歳(寝かしつけ絵本にどうぞ)