お父さん大好き、パパ大好き!
子供が真っ直ぐ向けてくる愛情、父親の皆様はどんな風に応えていますか?
こちらは熊の父子の散歩を通して、家族の絆を描く素敵な絵本。
ぜひ父から子へと読んでみてくださいね。
簡単なあらすじ
ホットケーキが大好きな熊の子、今日もかあさんと一緒に、旅へ出ているとうさんの帰りを待っています。
とうさんはいつ帰ってくるの、まだかなまだかな……そして、ついにある日、とうさんがお土産をどっさり持って帰ってきました!
とうさんが帰ってきた事でゆっくりと動き出す父子の時間。
ねえ、とうさん、一緒に散歩に行こうよ!
絵本の紹介
親子の絆に心がほっこり
熊の子が父さんへ向ける尊敬と信頼と愛情には一切の曇りがなく、眩しいくらい!
父さんと手を繋ぎ、父さんに肩車してもらい、父さんの背中に乗せてもらって泳いでもらい……繰り返される「ねえ とうさん」のセリフに込められた熊の子の、「とうさんなら何とかしてくれる」という熱い期待と目一杯に甘える気持ちが、可愛くて仕方ありません。
熊の子の鼻歌が聞こえそうな後ろ姿、嬉しさが零れ落ちる笑顔、驚いてまんまるな目。
ぼくの父さんは世界で一番強くて、世界で一番頼もしくて、世界で一番すごいんだ、何でもできるんだ、と我が子にこんなキラキラした憧憬の眼差しを向けられたら、そりゃあ、父としては頑張ってしまいますよね~。
熊の子の気持ちに背中で応える寡黙な父さん、カッコイイです。
熊の父さんの頑張り具合、「どうだい?」と言わんばかりの表情にも心和みますよ。
私が特に好きなのは、父さんへの尊敬と称賛を口にする熊の子に対して、口数少ない父さんが返すセリフ。
「おれは ただ、くまらしいだけさ。くまだからね」
とうさんは、しずかに いいました。
(引用元:小学館 佐野洋子著「ねえ とうさん」 2001年出版)
す、素敵ーー!
自分を飾る事なく、己の本分を口ではなく行動ではっきりと示す……私がメス熊だったら、惚れてます。
熊の母さんが父さんの留守をしっかり守る気持ち、帰ってきた父さんへ真っ先にキスをする気持ち、わかりますよ、わかっちゃう。
これは熊の子も父さん大好きっ子になって、父さんを尊敬する訳ですよ。
世のお父さん方、ぜひ熊の父さんのカッコよさを見習いましょう!!
佐野洋子さんの優しいタッチ
作者はロングセラー絵本「100万回生きたねこ」で有名な佐野洋子さん。
温かく優しい眼差しと心がほかほか温まるユーモア、そして細やかな心のひだを丁寧に描く絵本作家さんで、私を含め、ファンが大変多い方ですね。
「ねえ とうさん」は全体の色合いはキンピラごぼうか筑前煮みたいな茶系メインで、ぱっと見の華やかさには欠ける為、あまり目立つ絵本ではありません。
お店や図書館の本棚に並んでいても、あっさり見過ごされそうな地味さ加減……でも、読んでみれば、熊の表情、仕草のひとつひとつが表現豊かなんですよ。
また、画面がシンプルだからこそ、熊の父子の会話、2匹の心のやり取りをじっくり楽しめるんです。
描かれているのは、ごく何気ない父と子の触れ合い、熊一家のとある休日に過ぎないのに、人によってはいかようにも読み取れる深いメッセージ性が込められているのも、さすが佐野洋子さんですね。
父から子への読み聞かせにぜひ!
私は出産祝いにもよく贈ってます。
お腹で子供を育てる母親よりも1周遅れ、子供が生まれてから父親業がスタートする男性陣に、育児を楽しめる機会をより多く持てますように、と願いを込めて、父子を描いたこの絵本をプレゼント。
なにしろ、絵本は、母親と子を描くのが昔からどうしても多くて、父親はまだまだ添え物扱いなんですよね~。
読み聞かせをする父親だっているのに、父子が描かれている絵本が家にないだなんて、寂しいじゃないですか?
それにしても、最近こそ父親メインに描かれる絵本は増えてきましたが、全体的に見れば未だ少数派ですね。
これって、日本の父親による育児参加の度合いが今までどれだけ低かったかが、結構如実に表れているのではないかと……。
でも、逆に考えたら、男性は育児から疎外されてきた立場なんだなあ、とも考えられるんですよ。
育児は母親のもの、という考えは、父親をその輪の中に入れようとしてませんものね。
今までは、父親が育児にもっと参加したくとも、家庭を優先させたくとも、それができない許されない構造を持った社会だったのかも。
という事は、父親メインの絵本が出できた今は、求められる父親像が変化してきた表れですから、男性陣が正々堂々と(?)育児を楽しめる絶好のチャンス!
やったー、素晴らしい時代になりそうじゃないですか~。
ぜひ、育児を義務ではなく、権利として、楽しく目一杯に享受して欲しいですね。
「ねえ とうさん」は、父への愛情をストレートに伝えてくれる幸せな絵本ですから、これからの新しい時代のお父さんである男性方が我が子との読み聞かせ時間を楽しむのに、ぜひオススメです。
我が家の読み聞かせ
我が家のちびっ子兄弟の父でもある夫は、息子達がもっと小さかった数年前は早朝出勤も深夜残業も当たり前、帰ってくるのは常に終電間近、休日出勤に夜勤に泊まり込みもありと、私から見ても相当な激務だったんです。
数少ない休日こそ率先して育児参加をしてくれましたが、基本的に息子達の寝顔しか見られない日々。
息子達にとって、父は滅多にいないレアキャラ……仕方ないとは言え、その内に息子達から「おかえり」ではなく「いらっしゃい」と言われたらどうしよう~、と夫本人は恐れておりました。
その為、私が心掛けていたのは、「おとーさんに今度ブロックで恐竜作ってもらおうか」「おとーさんに絵をプレゼントしてみる?」「おとーさんがお仕事を頑張ってくれるから、美味しいご飯が食べられるんだよ~」など、毎日夫の話題を出していた事。
息子達に一番近い存在の私が常に話題に出して、家庭における「父」の存在をアピールするのが良好な父子関係に繋がる、と考えていたんですよね。
で、その際に活躍したのが何を隠そう、この絵本!
息子達にはこの絵本を何度も読み聞かせ、父親の話へ誘導しては、「おとーさんはすごい」と刷り込みしまくりました。
「おとーさんは何でもできる!」「おとーさんは頼りになる!」「おとーさん、万歳!」……私の刷り込みが実際に効果があったかどうかは定かではありませんが、現在の息子達による父へのリスペクトは確固たるものとなっております。
しかし、最近では「息子達からの絶対的な信頼感へ応えるのが、逆にめちゃくちゃ大変なんだけど……」と夫から苦情が。
いやいやいや、熊の父さんならば、いつでも息子からの信頼に100%応えるはず!
泣き言を言わずに、私がナイスアシストしてあげた父としての威厳を頑張って保つといいよ、と励ましておきました。
私は今もこの絵本を読み聞かせする度に、「2人のおとーさんもすごいよね!」と煽っています。
まとめ
我が子から、この絵本を読み終わった後、熊の子みたいにキラキラした目をして、「お父さんみたいになりたい」なんて言われたら、世のお父さん方はどんな気持ちなんでしょう?
母親である私には計りかねますが、とりあえず、我が家の場合、夫は満更でもない……というより、相当嬉しいみたいです。
このキラキラした目を大人になっても待ち続けてくれたら、いいんですけどね〜。
皆様も、この絵本を読み聞かせしたら、こっそりお子さんの目を覗いてみて下さい。
熊の子みたいにキラキラしているでしょうか?
作品情報
- 題 名 ねえ とうさん
- 作 者 佐野洋子
- 出版社 小学館
- 出版年 32ページ
- 税込価格 1,540円
- ページ数 2001年
- 我が家で主に読んでいた年齢 2~4歳(お父さん大好きな子にぜひどうぞ)