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絵本『どろんここぶた』可愛くてユーモアたっぷりの珍道中

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世界で1番チャーミングな愛され子豚(?)が主人公の「どろんここぶた」。

豚って臭くて汚くてうるさいのよね……そんな豚へのマイナスイメージなんて、この可愛いこぶたとの出会いで吹っ飛んじゃいますよ!

 

 

 

簡単なあらすじ

お百姓さん夫婦に飼われているこぶたは、どろんこが大好き!

庭のやわらかいどろんこに、鼻先までずっぷり埋まるのが、たまらなく幸せなんです。

あ~~、どろんこって最高~~~~。

なのに、奥さんが大掃除したせいで、大切などろんこがなくなっちゃった……こうなったら、家出するっきゃない!

 

絵本の紹介

可愛いこぶたに翻弄されるコメディ

私、この絵本で豚の可愛さに目醒めました。

以前から、海外では豚をペットで飼う事もあれば、豚のコンテストも昔から人気がある伝統のコンテストだとは知ってはいましたが、豚がこんなに愛くるしい存在だとはつゆ知らず……!

伸びやかな線で描かれたぷりぷりボディのこぶた、さして擬人化されている訳でもないのに表情豊かで、とってもラブリー。

どろんこまみれだろうが何だろうが、その可愛さは不変です!

どろんこに埋まる時の恍惚とした顔。

 奥さんのとんでもない暴挙を知った瞬間の苦々しい顔。

 旅先で見せる、前へ前へと進んでいく冒険心いっぱいの顔。

 思わぬアクシデントに見舞われた時のへちゃっとした情けない顔。

 どの表情もとっても魅力的で、胸をずぎゅんと撃ち抜かれるーーー!!

 いやー、豚最高、豚のキュートさに気づかなかった過去の自分を説教決定です。

 

この可愛さMAXのこぶたが理想のどろんこを求めてロードムービーしている一方で、家出された側のお百姓さん夫婦は大慌て。

なにしろ、お百姓さん夫婦はこぶたを愛しているし、奥さんの大掃除も悪気はなかったんです。

ただ家中を綺麗に掃除するスイッチが入ってしまって、こぶたの家も綺麗にしてあげたかっただけ。

わかりますよ、時折掃除スイッチが入ると、普段はやらない所も気になって掃除しまくってしまう事ってありますものねー。

そう、奥さんは少々やり過ぎてしまっただけ……こぶたの家出を知ったお百姓さん夫婦、車を飛ばして遠方まで必死にこぶたを探しに来るんですから、並々ならぬ愛ですよ。

 

自分にとっての好きを追求して家出するこぶた、こぶたを心から愛するお百姓さん夫婦、両者のすれ違いは、古き良きアメリカを連想するノスタルジックな絵柄も相まって、往年のハリウッドのコメディ映画みたい。

1950~60年代のハリウッドコメディの基本はすれ違いですからね、この絵本のアメリカでの初版は1969年で、さもありなんと思えませんか?

こぶたを襲ったコメディチックなアクシデントも、お百姓さん夫婦からしたら、かわいいこぶたを襲った理不尽な悲劇!

喜劇王チャップリンの「人生は近くて見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」という有名なセリフを地で行く様子が、なんともおかしいです。

「青い鳥」が説く、幸せは身近にあるもの、じゃありませんが、理想のどろんこがあったのは結局一番身近な場所……旅の末に再び我が家に戻ってどろんこを手に入れたこぶた、愛するこぶたの全てをあるがまま受け入れたお百姓さん夫婦。

最後はみんなで家に帰って、両者納得の大団円~。

 

 

どこかノスタルジックな画風で、何気ない日常の幸せを描くこの手腕、さすがは絵本「ふたりはともだち」シリーズを描いたアーノルド・ローベルさんですね。

ローベルさんの誰を貶める事もない、優しいユーモアは心をぽかぽか温めてくれます。

 

 

 

それに、邦題も良いですね~。

原題は「Small Pig」、直訳すれば「ちいさなぶた」。

「どろんこ」をつけたのは、日本語版の意訳なんですね。

ただのこぶたでも、ただのちいさなぶたでもなく、ひらがなだけが並ぶ「どろんここぶた」という響きには、親しみやすさと可愛らしさがあります。

絵本の訳をするというのは、ただ文章をそのまま日本語に直すのではなく、文化が異なる国の子供達へその絵本の魅力を伝えていく大切な仕事なのだな、と再認識しますよ。

 

 

オマケ:豚がどろんこ好きな理由

余談ですが、豚が泥遊び大好きなのには、ちゃんと意味があるそうです。

暑くても汗をかく為の汗腺が退化している豚にとって、

 

泥を浴びる

泥から水分が蒸発

体熱を奪う

体温を下げる

 

という重要な体温調節の役割を果たしているそう。

更には、体に付いた寄生虫を泥で落とす寄生虫対策、皮膚を直射日光から守る日焼け止めなどの効果もあるんだとか。

まさか泥にそんな効果があるとは……豚にとって泥は不可欠なんですねえ。

そういう視点で見てみると、本作のこぶたがどろんこLOVEなのも納得です。

本能レベルで求めているものを「汚いから」と捨てられてしまったら、そりゃー怒りますわね。

そもそも、人(豚)のものを勝手に捨てちゃいけません、私も気を付けよ~っと。

 

 我が家の読み聞かせ

絵本というよりも児童文学に近いハードカバーの装丁に仕上げてありますが、どのページも絵がしっかり描かれており、内容自体は4~5歳から読み聞かせるのに丁度良い文章量です。

最初、この装丁は内容量がかなり多いのではと思いましたが、実際の読み聞かせ量は通常の絵本と大差ありませんから、気軽に読めますよ。

 

 

我が家のちびっ子兄弟へ読み聞かせる時は、こぶたの感情豊かさが強調できるように、抑揚を常よりも大きくつけて読んでます。

コメディ的な要素が大きいので、その方がこの絵本には合ってるような気がするんですよね。

私のイメージするこぶたは、元気一杯でコロコロ走り、目標に向かってまっしぐら、お百姓さん夫婦にに甘やかされてワガママ気味だけど憎めない、基本ハッピーな豚さん。

こぶたの魅力よ、息子達に届けーっと念じてますが、通じてるかな……?

 

感想を聞いてみると、我が家の5歳次男は、こぶたが旅をするのを見るのがわくわくするそう。

小さな子供にとって、1人で家を飛び出して旅をするなんて行動は憧れつつも、なかなかできるものじゃありませんからね。

こぶたに自分を投影して、つかの間の旅気分を味わっているみたいですよ。

「ぼくもいつかはおにーちゃんと一緒に旅をするんだぁ!」と申しております。

そこは1人じゃないんだね……そもそも肝心の兄には「ぼくは一緒に行かないよー」と断固拒否られてますけど……。

 

まとめ

この絵本は文章が平易で読みやすいので、読み聞かせにも、小学校低学年の音読の練習にも向いています。

結構長い期間、読んで楽しめますから、こぶたの魅力に心惹かれた方はぜひ手に取ってみてくださいね。

そして、どろんこ探しの旅へ出発!

自分にとってのどろんこ、大切なものはなんだろう、と子供と一緒に考えてみても楽しいかもしれませんよー。

 

 

作品情報

  • 題 名  どろんここぶた
  • 作 者  アーノルド・ローベル
  • 訳 者  岸田衿子
  • 出版社  文化出版局
  • 出版年  1971年
  • 税込価格 1,045円
  • ページ数 64ページ
  • 我が家で主に読んでいた年齢 4~7歳(長男6歳から自力で黙読始めました)