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絵本『ウェズレーの国』夏休みの自由研究に自分の国を作ろう

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こんな素敵な夏休みの自由研究はいかが?

ウェズレーの自由研究は、自分の国作りプロジェクト!

彼はこの自由研究を通して、自分らしく生きる自由をその手でつかみ取りました。

個性って何だろう、自分らしさって何だろう……そんな悩みも、夏の熱い風が絵本の中を吹き抜けて、凝り固まった常識と一緒に吹き飛ばしていく爽快感、最高でーす!

 

 

 

簡単なあらすじ

ウェズレーに友達はいません。

理由は簡単、ウェズレーが町の子供達とは違うから。

自他ともに「浮いている」と認めるウェズレーは、帰り道にトマトをぶつけてくる子供達から逃げ、家では本を読み漁る日……。

そんなある日、夏休みの自由研究に「自分だけの文明を作ろう!」と思い立ちます。

こ、これはすごい自由研究になりそうだぞ~~。

 

 

絵本の紹介

「普通」って何?

ウェズレーの住む町は、みんな判を押したように何でも同じ……とにかく同調圧力がすごい!

男の子は頭の両側をツルツルにそり上げたソフトモヒカンと決まっているし、住んでいる家も同じような見た目がずらりと並び、食べ物も遊びも同じようなものが好きなのが常識。

絵本を読んでいる側からしたら、ウェズレーのように自分の好みを持つのは「普通」の気がしますが、この町では、ちょっとでも個性を出した瞬間に「普通」から外れ、はみ出し者扱いです。

あー、なんかこれ、アメリカの絵本ですけれど、日本人だと余計に共感する気が……飛び出た釘を打つのをお家芸とする日本の社会では、個性を尊重なんて、今でも実現が難しいですものねー。

 

 

 

 

ウェズレーの両親も周りから浮いている息子を心配しますが、結局彼らも町の人間……真の意味でウェズレーを理解する事も寄り添う事もせず、ただ決まりきった言葉を掛けるだけが精一杯。

初めに交わされるウェズレーと両親の会話は、見ようによっては息子を気にかける両親なりの愛情に満ちた会話、その一方では、自分達の手に余る息子へ向き合おうとしない空虚な会話にも聞こえます。

うーん、これ、作者さん達はどちらのつもりで表現したんでしょう??

私が読んでいるのは日本語訳なので、原本の英語版はどういうニュアンスなのか気になります。

でも、ウェズレーの国作りを庭で自由にやらせてくれている辺り、親として子供を思う気持ちはちゃんとある様子……例え、ボタンが掛け違っている部分があったとしても、愛情が存在しているというのは救いですね。

 

 

最高に楽しい国作り

さて、その息苦しい町に暮らし、「自分だけの隠れ家」に憧れていたウェズレーの自由研究「自分だけの文明」の基本はまず農業から!

今まで本で得た知識をフル活用し、庭を耕して作った畑に西風が運んできた種を育てる事からスタートします。

これがどんな図鑑にも載っていない変てこりんな作物で、植物界のウェズレーかと思うくらい、他の植物からは浮いている、けれど、ものすごいお役立ち植物!

収穫した実は美味しいし、根っこも美味しいし、茎から取った繊維で服も帽子も作れて、絞った油では日焼け止めアロマオイルまで作れるんですから、万能。

いや、むしろ、植物の一切を捨てる所なし、と使い道を次々見出していくウェズレーの知識量と実行する手腕にも惚れ惚れしますよ。

 

あー、これは読むの楽しい~、読んでいる子供はきっともっと楽しい~~~!!

子供の頃って、いろんな想像しますけど、自分だけの設定とか考えたりしませんでしたか?

もし自分に魔法が使えたらとか、もしロボットのパイロットになったらとか、もしお姫様に生まれたらとか……ちなみに、私は想像しまくってポエムやお話、設定集まで書いてました。

大人になると黒歴史化しますが、「もし……」を考えるのって、想像力豊かな子供には娯楽ですよね。

 

 

 

 

その娯楽のはずの「もし……」をどんどん実現していくウェズレーは、子供達にとっては眩しい憧れの存在に映るかもしれません。

農業に留まらず、屋根のない涼しい家を作り、オリジナルの暦を作り、オリジナルの遊びを考え、オリジナルの文字を作り……ウェズレーの国作りはワクワクの連続です。

自分で考えるのは、そして自分で作るのはこんなに楽しいんだ、とウェズレーの働く姿からはびしびし伝わってきますよ。

その探求心とアイデア力、自主性と行動力は大したものです。

 

 

自分らしさと自信を手に入れたウェズレー

見事、自分の居場所を自分の力で作り上げたウェズレー。

今まで押し込められていた自分らしさを誰憚る事なく発揮する彼が噛みしめるのは、どれほどの解放感なんでしょうか……。

夜、自分で作った家のハンモックに寝そべりながら、ウェズレーが1人吹き鳴らす笛の音が、星空へと吸い込まれていく場面は、ちょっとした感動モノ。

 

みんなからトマトをぶつけられていたウェズレーの心の中に、こーんな個性、自分だけの国が眠っていたとは……!

自分だけでなく、周りすら変えてしまったウェズレーの国作り。

人間、やろうと思えば何でもやれるものなんだ、と教えられますよ。

個性を思う存分発揮して、表情もどんどん晴れやかに、自信に満ちたものへと変わっていく姿をぜひ目にしてみてほしいです。

 

いやー、なんて素敵な個性の描き方なんでしょう。

読後感も爽やかで、気持ちを前向きにしてくれる絵本ですね。

ウェズレーだけでなく、町のみんなも、読んでいる私達自身にも、本当は心の中に自分だけの国をそれぞれ持ってるのかもと思うと、なんだか急に「よーし、やるぞーっ!」とパワーが湧いてきます。

 

 

絵に込められたメッセージ

この絵本、私は読んでいてとても前向きに、晴れ晴れした気持ちになるのが好きなんですけれど、この表紙が特にいいなぁ~っと惹かれます。

風が、花を揺らし、ウェズレーが着ている服の裾ををはためかせているでしょう?

直接見えてはいないけれど、そこに間違いなく吹いている風。

国作りの基礎となった植物の種を運んだ、始まりの風。

その後もずっと見えないけれど吹き続けて、ウェズレーの心にこれからもずっと吹き続けるのを予感させる、自由の風。

 

この絵本はもしかしたら、読んだ子供の心にも自由の種を蒔いてくれる風の絵本なのかも、と感じる表紙の絵……何度見ても、やっぱりイイ!

これを書いたケビン・ホークスさんは、絵の中に、心が熱く清々しくなるようなメッセージを込めるのが得意なんでしょうね。

私の大好きな絵本『としょかんライオン』も挿絵をケビン・ホークスさんが手掛けていらっしゃいまして、やはり1枚の絵に込められた、目に見えないものに心が動かされるんですよ。

そちらもとても良い絵本なので、『ウェズレーの国』と同じくらい、オススメですので、ぜひ図書館で手に取ってみて下さい。

 

 

 

我が家の読み聞かせ

小学校低学年は絵本から児童書への過渡期にあたる時期。

といっても、絵本を完全に卒業する訳ではなく、絵本を人に読んでもらうよりも自分で最後まで読む機会が増えるだけで、まだまだ絵本が必要とされている時期です。

『ウェズレーの国』は、幼稚園や保育園にはない自由研究が重要なきっかけとなるお話なので、ぜひ小学校低学年に読んでほしい絵本ですね。

 

我が家では幼稚園児の5歳次男も大好きなお話ですが、現役小学生である7歳長男の方がやはり自由研究を考えて実行する大変さを多少なりとも経験している分、ウェズレーの成し遂げたものの大きさを実感するようで、好きの度合いの深さが違います。

ライトなファンとコアなファン、みたいな感じかな?

 

長男、この絵本を読んでは、「ぼくにもウェズレーみたいな自由研究ができるかなあ」と頻繁に口にします。

もちろん!

ウェズレーのような不思議な作物をゲットして育てるのは難しいかもしれないけれど、君には君らしい自由研究、君だけの自由研究があると思うよ!

好きなものを探して、自分でやれる所までやってみるのがいいんじゃないかな?

「そうかな~、じゃ、ぼく、まずは本を沢山読んで、博士になるよ!」と長男の目はキラキラ。

 

そうは言っても、長男、ウェズレーみたいになると奮起したり、やっぱり無理だと繰り返してみたり、まだまだ心がジェットコースターのように上下している状態です。

でも、悩むのだって、長男の個性。

『ウェズレーの国』も、学校の宿題の自由研究も、どちらも大事なものは、目先の結果ではないですからね……さあ、息子がそれに気づくのは、何歳になった時でしょう?


 

まとめ

ウェズレーの自由研究、素晴らしかったでしょう?

その成功もあの不思議な植物があったからでは、と一瞬思うかもしれませんけれど、ウェズレーならば、あの植物がなくても、やり遂げたはず。

だって、不思議な植物があった所で、それを育て、様々な使い道を模索し、新しい発明を次々にしてみせたのは、他ならぬウェズレー自身の力。

自分の持てる全てを出せば、子供だって、凄い事ができるんです。

 

この絵本から吹く風、どうか皆様の元にも届きますように!

 

 

作品情報

  • 題 名  ウェズレーの国
  • 作 者  ポール・フライシュマン(文)/ケビン・ホークス(絵)
  • 訳 者  千葉茂樹
  • 出版社  あすなろ書房
  • 出版年  1999年
  • 税込価格 1,540円
  • ページ数 33ページ
  • 我が家で主に読んでいた年齢 5~7歳(小学校の夏休みがベストシーズン)